司法試験は法律系資格試験の最高峰です。裁判官・検察官・弁護士になるための国家試験です。
合格率は30%ですが、そもそも受験資格を満たすハードルが非常に高いため、比較的合格率は高くなっています。
この記事では、司法試験の合格率や難易度、勉強時間などについて予備試験合格者と法科大学院修了者の比較を交えながら詳しく解説していきます。
司法試験とは
司法試験とは、裁判官・検察官・弁護士(法曹三者)になるための国家試験です。最難関試験であり、合格に5年以上かかる人もいます。
また、そもそも受験資格を満たすこと自体が非常に難しくい試験になっています。
受験資格
司法試験の受験資格を得るには、「予備試験に合格する」か「法科大学院を修了する」の2つの方法があります。

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予備試験に合格する
「予備試験」とは、法科大学院修了者と同等であるか否かを判定する試験です。したがって、法科大学院入試よりも難易度が高くなっています。
ただし、学歴などの要件は一切ありません。科大学院に通うための時間や費用をかけることなく、法曹を目指すことができるのです。
ただ、予備試験の合格率は3%程度と、非常に難易度の高い試験です。
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法科大学院を修了する
法科大学院の入試に合格し、修了すれば司法試験の受験資格を得ることができます。法科大学院には、大学で法律を学んだか否かで以下の2つのコースが用意されています。
・既習者コース:大学の法学部出身者などが対象(在学期間2年)
・未修者コース:大学の法学部出身者以外が対象(在学期間3年)
ただし、司法試験を受験する期限と回数には制限があります。
受験できるのは、資格取得後5年以内に3回までです。もし、それで合格できない場合には、受験資格を得るところからやり直しをしなければなりません。
したがって、司法試験合格者を多く輩出する大学の人気が高くなります。東京大学、京都大学、一橋大学などの法科大学院がその代表です。
司法試験の合格率・合格点
司法試験の合格率は約30%
新司法試験開始後、合格率は下降傾向にありましが、令和元年度は最近10年で最高の33.6%でした。
推移は下のグラフの通りです。

近年の合格率は30%程度で推移していることが分かります。一見すると、難関試験のはずが合格率が高いように見えます。
しかし先述の通り、そもそも司法試験の受験資格を得るまでに厳しい要件があります。そのため、司法試験を受ける人は一定のレベルに達している人のみということになるので、司法試験の合格率はそれなりに高くなるのです。
予備試験合格者の方が圧倒的に合格率が高い
次に、司法試験の合格率を予備試験合格者と法科大学院修了者で分けて見てみましょう。
令和元年度の合格率は、予備試験合格者82%、法科大学院修了者29%です。
詳細は下表の通りです。
[司法試験合格率上位(令和元年)]
受験者 |
合格率 |
予備試験合格者 |
82% |
法科大学院修了者全体 |
29% |
京都大学法科大学院 |
63% |
一橋大学法科大学院 |
60% |
東京大学法科大学院 |
56% |
慶應義塾大学法科大学院 |
51% |
予備試験は非常に難易度が高く、合格すれば司法試験に合格できる力が十分に身についていると言えるでしょう。
合格ラインは6割
司法試験の合格ラインは、1次の短答試験は60%程、2次の論文試験では45%程以上の得点となっています。
なお、短答式試験の合格基準には以下の条件があります。
- すべての科目で40%以上の得点をする
- 3科目(憲法、民法、刑法)の合計得点でその年の合格最低点を上回っている
なお、論文式試験は総合点でその年の合格基準点を上回り、全科目で満点の25%以上の点を得ることが合格基準となっています。
つまり、両方の試験を満遍なく勉強しなければなりません。
足切りなどには注意がいりますが、4割近くは落としても大丈夫ということになるため、細かく勉強しすぎないように注意しましょう。
司法試験合格に必要な勉強時間
司法試験合格に必要な勉強時間はやはり個人差があるものの、目安としては以下のようになります。
・予備試験合格者:予備試験対策を含めて総計10000時間
・法科大学院修了者:入試を含めて総計10000時間(既習者の場合)
予備試験合格者・法科大学院修了者ともに総計は10000時間と言われています。ではそれぞれについて詳しくみていきましょう。
予備試験合格者
予備試験から目指す場合、予備試験対策がそのまま司法試験対策になるというメリットがあるとは言え、予備試験対策を含めて総計で10000時間が目安です。
なお、司法試験の合格率で見ると、どの法科大学院よりも予備試験合格者の方が高くなっています。したがって、近年では予備試験ルートで目指す人が増えています。
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予備試験合格までに必要な時間
予備試験の合格には最短でも2年、勉強時間は3000~8000時間必要とされています。
ただ、元々の法律に関する知識量や科目による得手不得手、さらに予備校や通信講座の利用有無で必要な勉強量や時間に個人差があります。2000時間程度で合格する人もいれば、10000時間以上かかる人もいます。
予備試験の場合、短期間で合格できる人もいますが、こちらも個人差が大きく法科大学院修了者以上に時間を要する人もいます。
法科大学院修了者
法科大学院の場合、大学院の講義後4~5時間、週末は1日10時間の勉強を継続できれば、大学院修了後の一発合格も可能です。
在学中の勉強は既習者2年コースで約8000時間、入試対策を含めると総計10000時間になります。未修者コースであれば、さらに多くかかります。
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法科大学院修了までに必要な時間
法科大学院終了までにかかる期間は、既習者コース6年(大学4年+大学院2年)、未修者コース7年(大学4年+大学院3年)です。
また、法科大学院入試の難易度は、大学によってかなり幅がありますが入試を合格するためには最低2000時間の勉強が必要だと言われています。
時間と費用を考慮しなければ、受験資格を確実に取得できるのは法科大学院を修了することです。
費用
一般的に法科大学院に進学すると、既習者でも6年かかり、学費も高額です。
一方、予備試験の場合は合格するまでの年数によって負担は変わってきます。
・予備試験:資格予備校などの受講料 50~150万円(最短で2年)
・法科大学院:学費総額 300~500万円(修了まで最短6年)
予備試験は短期間で合格できれば負担は抑えられますが、合格までに必要な期間は個人差があります。長く予備校などに通えば、当然上記よりも費用はかかります。
したがって、どちらが負担が軽いかは、一概には言えません。
司法試験の受験者情報
受験者数
司法試験の受験者数は平成23年度をピークに減少傾向にあります。令和元年度は4,466人でした。推移は下のグラフの通りです。

受験者数が減少しているため、法曹人気が減ったと思われるかもしれません。
しかしこれは、法科大学院の修了認定が厳しくなったことや、定員規模が適正化された結果でもあるといえます。
法科大学院の標準年限修了率(修業年限で修了できる割合)は、80%(2007年度)から64.8%(2018年度)となっています。修了できる割合が8割から6割になり、教育の厳格化が進んだといえるでしょう。
法科大学院の修了生の質を高めることで、司法試験受験者、ひいては司法試験合格者の質が維持されてきているといえます。
そして法科大学院の入学定員は、2007年度は5825人でしたが、2019年度は2253人と半分以下となりました。統廃合によって法科大学院の数が減り、定員も削減されています。法科大学院の制度改革は着実に進んできているのです。
合格者受験回数
令和元年度の司法試験合格者における受験回数は、1回目58.0%、2回目18.5%、3回目9.1%となっています。

厳しい受験資格を突破している受験者だけあって、1回目で合格する人が6割り近くになります。
既修・未修別合格者割合
令和元年度合格者の既習者、未修者別の割合は既習者(法学部)71.7%、既習者(法学部以外)4.0%、未修者(法学部)16.9%、未修者(法学部以外)7.1%でした。

やはり法学部の既習者が7割と圧倒的に多く合格しています。
弁護士資格を得る方法(司法試験合格後にも試験がある)
弁護士、裁判官、検察官を「法曹三者」と呼びます。法律系国家資格の最高峰に位置づけられています。
弁護士になるためには、まず司法試験に合格した上で1年間の司法修習を修了しなければなりません。さらにその後実施される司法修習生考試(通称2回試験)にも合格しなければなりません。
また、弁護士として仕事をするためには、日本弁護士会に登録し、入会金や登録料、年会費などを納めることが必要です。
近年、司法制度改革により、司法試験合格者が増加しています。弁護士資格保有者は全国で約4万人になっています。
司法試験に合格するには
独学は厳しい
司法試験に独学で挑戦することは難しく、やはり予備校や通信講座を利用することをおすすめします。
司法試験合格までには長期間、大量の勉強をしなければならないため、他の資格試験よりも独学での勉強は困難になります。
さらに独学だと、モチベーションを保ったり自分でスケジュール管理をするということが難しくなってきます。
また、司法試験には論文試験があります。短答式とは違い、勉強の際に添削指導が必要になるため、そういった面でも予備校や通信講座の利用が望ましいと言えます。
過去問が重要
司法試験には引っかけ問題のパターンなどに一定の傾向があるため、過去問演習をして分析することは非常に重要です。
繰り返し演習をすることで、本番に向けての実践力を高め、回答スピード早くすることができます。
ただし、注意しなければならないのが法改正です。古いものを使ってしまうと法改正に対応できなくなってしまいます。テキストや過去問などを選ぶ際には、直近の法改正に対応したものを選ぶようにしましょう。
まとめ
では最後に、司法試験の難易度についてまとめておきましょう。
- 合格率は約30%だが、これは受験資格が厳しいためである
- 合格ラインは6割。満遍なく勉強することが重要
- 勉強時間は予備試験合格者・法科大学院修了者ともに総計10000時間
- 独学での合格は厳しい
以上、司法試験の難易度についてご説明しました。
多くの困難がある司法試験ですが、辛抱強く勉強を重ねて合格を掴み取りましょう!

監修 資格LIVE編集部
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