弁護士資格は、法律系資格の頂点です。弁護士法第3条に「すべての法律事務を職務とする」と書かれているように、税理士、社労士、行政書士などの有名難関資格も登録できるのです。
これほどの資格を合格するには果たしてどれほどの時間が必要なのでしょうか。
今回は司法試験に合格するための勉強時間や独学で合格を目指す方法などを解説していきます。
司法試験合格に必要な勉強時間は?
司法試験合格には10,000時間必要
司法試験は、暗記力(条文・判例)、論路的思考力(法律解釈)、論文記述力など、総合力が問われます。
必要な勉強時間については、学問的素養や学習環境などによるところが大きく、一概には言えません。数年でスムーズに合格する人もいれば、10年挑戦しても涙を飲むひともいます。
ただ、統計的にはおおよそ10,000時間が目安だと言われています。1日10時間の勉強を休みなく続けても3年ほどかかります。
ここで大切なことは、10,000時間の「中身」なのです。同じ10,000時間の学習で合格できる人、できない人の差は勉強法や時間配分などの中身です。実際、受験回数が3回を超えると、合格率が極端に下がるというデータがあります。勉強時間としては10,000時間を超えていても中身が伴っていなければいくら勉強をしたところで合格には届きません。
予備試験合格に必要な勉強時間
独学者の場合、予備試験を経て司法試験に挑むことになります。そのため、予備試験対策がそのまま司法試験対策になります。
一般的に、大手予備校などでは2年かけて予備試験合格を目指します。勉強時間は約3000~8000時間程度必要だと言われます。
もし独学で毎日7時間勉強すれば、2年で約5000時間になります。したがって順調にいけば、2~3年で予備試験合格を果たすことができます。
独学で弁護士を目指す人はいるのか
独学で挑む場合のリスクで最も大きいのは、間違いを正してくれる存在がいないことです。論文の添削なども1人で行わなければいけません。
しかし予備試験には受験資格がなく、誰でも挑戦することが可能です。予備試験にさえ合格すれば、学歴には全く関係なく司法試験を受験できるのです。つまり、制度上は独学で弁護士になることは可能なのです。
一般的に、法科大学院に進むと年間100万円前後の学費が必要です。大学から通算すれば、司法試験合格までに数百万円かかることになります。
独学であればそうした費用が不要であり、経済的なメリットは大変大きいと言えます。
しかし、司法試験は「超」難関であり誰でも受験できる予備試験でさえ合格率は3%前後です。
独学で合格を果たすためには、数年単位での計画で臨まなければなりません。モチベーションを維持し、粘り強く取り組む「継続力」が試されるのです。
独学に向いている人
これだけの難関試験に独学で挑むには、それなりの素質がないといけません。では、どういった人であれば独学で合格することができるのでしょうか。
法律系資格試験に合格している
法律に関する勉強経験がある人は、独学でも勉強を進める事ができるかも知れません。
具体的に言えば、行政書士や司法書士などの法律系資格を取得している人、あるいは大学で法律を学んだ経験がある人です。
基礎となる憲法、民法、刑法などの知識がすでに身に付いており、その上法律を学ぶ方法を経験していることが大きな強みになるのです。
また、判例を読むことに慣れていること、条文の構成を理解していることなどが勉強する上で大変有利です。
このように、法律を学んだ経験を持つ方であれば、独学でのチャレンジをする価値は十分にあるでしょう。
難関試験で独学合格の経験を持つ人
たとえ行政書士や司法書士などの難関法律系資格ではなくても、難関と言われる試験を突破した経験を持つ人も独学に向いていると言えます。
なぜなら、独学のコツを知っているからです。
例えば、「インプットとアウトプットにかける時間のバランス」「過去問題の活用方法」などが経験を通じて身についているのです。
また、試験直前時期の焦り、本番で分からない問題が出た時の動揺なども経験済みであることも独学に対するハードルを下げるでしょう。
独学の最大の敵は「孤独」です。周囲に惑わされず、自己管理して勉強を進める事ができる人であればやり抜くことができるでしょう。
独学合格するための勉強法
膨大な時間を必要とする司法試験ですから、独学でチャレンジするならばきちんと勉強方法を考えなければいけません。
これからご紹介するのはあくまでも参考にして、自分に合った勉強法を見つけてください。
長期的な勉強計画を立てる
まず、試験日から逆算して長期的な計画を立てましょう。
予備試験に合格するためには、最低1年、通常2~4年かかると言われています。
例えば、お正月から勉強を始めても5月に行われる予備試験に合格することはまず不可能だということです。
したがって、スケジュールを立てるには余裕を持たせることが必要なのです。余裕がなくギリギリの日程でスケジュールを組むと、少しでもずれると立て直すことができなくなります。
しかし、ただ期間を長くすれば良いわけではなく、モチベーションが維持できるようにしなければ意味がありません。自分が集中できる時間や日常生活のリズムなどを考慮してスケジュールを立てましょう。
まずはインプットを中心に
まず初めはインプットをしましょう。予備校のテキストや基本書を利用して、基本項目をしっかりとインプットしておかないと、アウトプット演習を行う際に非効率になってしまいます。
独学で大切なのは、最初に選んだ教材を徹底的に読み込むことです。さまざまな教材を使うより知識が定着し理解が深まります。
まず基本を固め、その上でより発展的な内容の教材を使うことをおすすめします。
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基本テキストをまず1周!
基本テキストを最初に読む時は、理解できない論点がたくさんあるでしょう。
しかし、1周目は分からない箇所をチェックする程度で、どんどん読み進めましょう。
まずは全体像を体系的に把握することに徹しましょう。
2周目以降で、理解を深めて行けば良いのです。テキストは最低3回読み込んで疑問点や不明点がクリアできた段階で、問題の演習に入りましょう。
また、基本テキストを読む作業と並行して、予備試験や司法試験の短答問題集にも取り組むと知識の定着に効果的です。
過去問題演習で実践力を磨く
インプットが終われば、本番で解答する力を磨くアウトプット演習です。そのためには、過去問題演習が必要不可欠です。
実際に出題された問題を解くことで、インプットの理解度が測れます。知識の抜けや解釈の誤りを確認して、しっかりと復習しましょう。
過去問は内容・レベルともに最高の練習教材であり、時間をかけて丁寧に取り組むことが合格に近づく道です。10~15年分を解けば、本番でも通用する実践力が身に付くでしょう。
間違えた問題はテキストで確認し、類似問題や同じ論点の問題では間違えないようにすることが重要です。過去問題演習の質と量が合否に直結するのです。
モチベーション維持が苦手な人は
長期間に渡る勉強は、いかにモチベーションを維持するかが大変重要です。
モチベーションを保つことに苦手意識がある人は、通信講座の利用をおすすめします。
通信講座は、最適なカリキュラムに基づく学習計画を提供してくれますので、迷うことなく勉強を進めることができます。
テキスト選びの注意点
テキストは自分の知識や学力のレベルに合わせて選ぶ必要があります。
例えば、すでに他の法律系資格を取得しており、そのために身につけた知識があれば基本レベルではなく、最初から応用レベルの教材を選んだ方が良いでしょう。
一方、初学者の場合、必ず初学者向けの教材で基礎を固めることから始めるべきです。いきなり難しい内容まで詳細に解説したようなテキストを使うと、専門用語や論証、判例などについて正確に理解できない可能性があります。まずは基礎を固め、その後レベルを上げていくようにしましょう。
あとは読みやすいレイアウト、色使い、通勤中などに使いやすいなど、自分に合うと感じるものを選べば良いでしょう。
必ず最新版を使う
法律は時代の要請によって改正やあらたな条文が付加されることがあります。したがって、必ず法改正に対応した最新版の教材を使用しましょう。
最近では、民法で大きな改正がありました。
2020年度以降は改正後の内容が出題されるため、必ず改正について解説されている最新版で学習しなければなりません。
また、アウトプット演習のために使う問題集も改正に対応した最新版を選んで使うようにしましょう。
同じシリーズの教材を使う
教材は、できるだけ同じシリーズを使用した方が効率的に勉強を進めることができます。
インプット学習の際に、ポイントや解説の構成方法が共通であると確実に効率よく進みます。異なるシリーズのテキストを購入しても、大切な内容は重複しています。一つのテキストを徹底的に読み込んで理解を深める方が良いのです。
教材によって解説方法やポイントが異なり、下手をすると一度理解した内容でも混乱し、また覚え直すことになりかねません。
学習サポートアプリの活用
最近では、スマートフォンの普及で、司法試験対策にもアプリが数多くあります。
スマートフォンを使う時間の中で、ゲームや時間つぶしのニュース検索などに使っていた時間を勉強に振り替えるだけでも大変効果があるでしょう。
重いテキストなどを持ち運ぶ必要がなく、通勤時間や隙間時間を使って手軽に勉強をすることができます。
司法試験の短答問題演習用アプリ、論文対策アプリ、さらに判例六法を見ることができるアプリなど色々ありますので、勉強の進捗に合わせてインストールすることをおすすめします。
例えば、通信講座の資格スクエアは、予備試験の短答問題向けのアプリを提供しています。こちらは無料ですので、ぜひ活用してみてください。

まとめ
では最後に、司法試験に独学で挑むことについてまとめておきましょう。
- 司法試験は極めて難易度が高く、独学で挑むのは相当な覚悟が必要
- スケジュールにはある程度の余裕が必要
- インプット終了後、すぐにアウトプットに取り組むこと
- テキストは自分に合うものを使い切ることが大切
- 独学できる自信がない人は通信講座がおすすめ
独学で司法試験に合格するのは決して不可能ではありませんが、相当な苦労が待っています。長期間勉強を続ける精神力と、効率的な勉強法が必要です。
それでも司法試験に合格することのメリットは非常に大きく、苦労した分は必ず報われることでしょう。ぜひご自身に合ったやり方で、司法試験合格を掴み取ってください。

監修 資格LIVE編集部
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