最近、ビジネスパーソンに注目されている資格である中小企業診断士。
職場内でのキャリアアップだけではなく、独立や経営コンサルタントとしてのステップアップが期待されています。
しかし、社会保険労務士や行政書士と並んで、取得が難しい難関国家資格の一つです。
この記事では、過去のデータを振り返りつつ、中小企業診断士の難易度や勉強時間などについて説明します。資格取得を検討されているみなさんの、お役に立てれば幸いです。
中小企業診断士はどんな試験?
中小企業診断士の試験は、1次が筆記試験、2次が筆記試験(短答式と論文式)と口述試験になっています。
1次試験合格→2次筆記試験合格→2次口述試験
という3段階で進んでいきます。
また、1次試験で合格ラインの60%の正答率を獲得した科目は科目合格となり、翌年度と翌々年度の1次試験を免除されます。
つまり、3年間ですべての科目に合格すれば1次試験合格となります。
さらに、一次試験の合格は2年間有効ですので、合格した翌年度も2次試験を受験できます。
ただ、中小企業診断士として名乗るには、試験合格後に実務補習もしくは診断実務従事(ともに15日間以上)を修了し、登録申請を行う必要があります。また、登録の有効期間は5年なので、5年ごとの更新申請が必要です。
中小企業診断士試験の合格率
- 1次試験の合格率
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和元年 | 14,691人 | 4,444人 | 30.2% |
平成30年 | 16,434人 | 3,236人 | 21.7% |
平成29年 | 14,343人 | 3,106人 | 21.7% |
平成28年 | 13,605人 | 2,404人 | 17.7% |
平成27年 | 13,186人 | 3,426人 | 26.0% |
- 2次試験の合格率
年度 | 受験者数 | 合格者数(筆記) | 合格者数(口述) | 合格率 |
令和元年 | 5,954人 | 1,091人 | 1,088人 | 18.3% |
平成30年 | 4,978人 | 906人 | 905人 | 18.8% |
平成29年 | 4,279人 | 830人 | 828人 | 19.4% |
平成28年 | 4,394人 | 842人 | 842人 | 19.2% |
平成27年 | 4,941人 | 944人 | 944人 | 19.1% |
1次試験の合格率はおよそ20〜30%、2次試験の合格率はおよそ20%弱です。
他の士業の合格率はだいたい一桁から10%代のため、数字だけを見ると高く感じますが、筆記や論文式と、単純な選択式ではないため試験内容は難しくなっています。
さらに先ほど説明したように科目合格があるため、すでに何科目かクリアしている受験者もいるので合格率は高くなります。
次に説明するように合格基準も厳しく設定されており、決して簡単な試験ではないことが伺えます。
中小企業診断士の試験内容・合格点は?
1次試験
1次試験は、試験科目が7科目あり、合格基準が総得点の60%以上です。
この基準で注意すべきところは、1科目につき40%以上の得点を取らなければいけないことです。
試験科目は以下の7科目です。
- 経済学・経済政策
- 財務・会計
- 企業経営理論
- 運営管理(オペレーション・マネジメント)
- 経営法務
- 経営情報システム
- 中小企業経営・中小企業政策
経営学だけでなく会計学や経済学などの分野の科目があり、単なる暗記だけでなく論理的思考力や、スキルが試される問題が多いのが特徴です。これは他の難関資格とは異なる特徴です。
2次試験
2次試験は、筆記試験と口述試験にわかれています。
筆記試験は、「中小企業の診断及び助言に関する実務の事例」という試験科目を短答式と論文式で解答します。合格ラインは1次試験と同じく60%以上で、かつ1科目につき40%以上獲得しなければなりません。
口述試験は、受験生1人に対して数名の面接官で行われ、試験時間は1人10分程です。
筆記試験の内容が題材となり、その事例についていくつかの質問がなされます。
ほとんどの受験者が合格する試験ですので、リラックスして臨みましょう。
中小企業診断士試験に必要な勉強時間
試験に合格するためには、どのくらいの勉強時間が必要なのでしょうか。受験者が、初学者なのか、再受験者なのか、1次合格者なのかなどによって、勉強時間は異なってきます。
ただ、あくまでも目安ですが、合格者の体験談によると初学者が1次から初めて2次も合格するための勉強時間は、1,000時間以上が必要のようです。
また、期間で考えると、どのくらいの勉強期間が必要なのでしょうか。
例えば、1日3時間の勉強を1年近く続ければ、合格に必要な1,000時間以上の勉強時間に達します。
ただ、1日3時間という時間を確保するのは厳しい、という方も多いと思いますのでもう少し長く見積もった方が良さそうです。
日頃の生活の中から通勤時間のような隙間時間を使い、勉強時間を確保する受験生が多いようです。
中小企業診断士試験に合格するための勉強方法
中小企業診断士は独学で合格可能
中小企業診断士は行政書士や社会保険労務士などと同じ、難関資格の一つと言われていますが、独学でも合格可能です。
ただ、無計画に勉強しては合格できません。効果的な勉強方法、試験日までのスケジューリング、テキスト選びなどの綿密な勉強計画が必要です。
全体を意識して勉強をする
この試験の特徴である1次試験の1科目40%以上という合格基準を考えると、得意科目で得点を取る勉強ではなく、不得意科目を作らないような勉強が求められます。また、試験が暗記問題だけなく、論理的思考力やスキルなどが試される問題のため、参考書の内容を暗記するだけの勉強方法では合格できません。
また、1次試験だけでなく2次試験の論文式や口述式もあります。さらに、1次試験と2次試験の内容がリンクしているため、試験全体を見据えた勉強が必要となってきます。
過去問題集と参考書の利用
繰り返しですが、この試験は参考書の内容をただ暗記すれば、合格できる試験ではありません。では、効果的な勉強とはどのような勉強なのでしょうか。
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まずはインプットから
この試験に合格するための効果的な勉強は、まずは参考書の利用によるインプットです。これまで試験に合格するためには、暗記ではない勉強が重要であると説明しているので、逆のことを言っているように思われるでしょう。
確かに、参考書を暗記する勉強では合格できませんが、初学者が何の知識も身につけずに勉強をしていても、合格はできません。「急がば回れ」ではないですが、いきなり問題集を解くのではなく、参考書を読むところから始め基本的な内容を一つ一つ覚え理解してから、先に進む勉強をするべきでしょう。
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インプットの後は過去問
参考書の内容がインプットできたら、過去問題集を利用しアウトプットをしましょう。一問一答のような問題集で勉強をすることも大切ですが、過去の試験で実際に出された問題を解くことはとても重要なことです。なぜなら、実際の試験の難易度や問題の傾向の把握だけでなく、論理的思考力も身につきます。
また、過去問題集で間違ったところの復習や、苦手な部分を明らかにする作業をしていきます。特に苦手な部分を明らかにすることは、「1科目40%以上」という合格基準の対策にもなります。
さらに、試験本番と同じ試験時間で行うことが大切です。時間配分をして問題を解くことの訓練になるだけでなく、本番での緊張や焦りを最小限にとどめることができ、本来の実力が試験で出せるようになるでしょう。
まとめ
では最後に、中小企業診断士の難易度についてまとめておきましょう。
- 試験は1次試験、2次筆記試験、2次口述試験の3段階
- 合格ラインは60%で、40%未満が1科目でもあれば不合格
- 科目合格すれば翌々年までその科目は試験免除
- 1次試験の合格率は20〜30%、2次試験の合格率は20%弱
- 勉強時間は1,000時間
いかがでしたでしょうか。中小企業診断士は、試験勉強に1,000時間以上が必要な難関国家資格です。ビジネスパーソンにとっては、勉強時間の捻出さえも大変なことでしょう。
そういった方は通信講座で効率的な学習をするのも手かと思われます。
また、資格の取得はゴールではなくスタートであり、このことは中小企業診断士の資格にも言えることです。
この資格をどのように活かすかはあなた次第です。どのような中小企業診断士になるかが定まったら、合格に向けて試験勉強をスタートしてください。

監修 資格LIVE編集部
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