中小企業診断士の将来性は?AI時代の需要や必要性を解説

多くのビジネスパーソンから人気を集めている中小企業診断士。中小企業診断士は、資格の人気調査で常に上位に位置しており、ある専門学校が発表した、2020年の「人気資格ランキング」にて3位に選出されました。ただ、中小企業診断士がどのようなことをする資格なのか、多くの人がわかっていないのも事実です。

この記事では、中小企業診断士について興味を持たれている方に、この資格の将来性やAI時代における需要などの様々な点について、わかりやすく説明します。

中小企業診断士とは

国が認める唯一の経営コンサルタント資格

中小企業診断士は、中小企業支援法第11条にもとづき、中小企業へ経営助言をすることが規定されている国家資格です。同法11条にて「経営の診断」「経営に関する助言」との文言が明記されていますが、他の国家資格を規定する法律では、上記のような文言は明記されていません。このことから同資格は、日本で唯一の経営コンサルタント資格と言われています。

中小企業の経営戦略の策定について専門的見地から助言をたり、策定した経営戦略を実行するために詳細な経営計画を立案し、その後の同計画の進捗状況や社会情勢の変化に対応した支援を行ったりします。

中小企業診断士の仕事内容

中小企業診断士は法律で規定されている経営コンサルタント資格ですが、おおまかな仕事内容は以下になります。

  • 経営コンサルティングとしての仕事
  • 中小企業と行政・金融機関とのパイプ役
  • 講演や勉強会の講師

主なコンサル業務に加え、中小企業と行政・金融機関との間に入り、補助金や助成金申請に対する助言を行ったり、企業や一般の方を対象とした講演や勉強会などの講師として仕事を依頼されることもあります。

中小企業診断士が注目される理由

前述の通り、中小企業診断士は多くのビジネスパーソンから注目されている人気資格です。なぜ、これほどまでに同資格は注目されるのでしょうか。この章では同資格が注目される理由について説明します。

中小企業診断士の収入

中小企業診断士は年収が高く、経営コンサルタント業務を行っている同資格保持者でおよそ4割が1,000万円以上であり、およそ1割が1,500万円以上です。1日のコンサルティング報酬で見ると、経営診断業務で平均が47,500円でした。

前述の通り、独立開業し報酬がほぼ収入になることを考えると、中小企業診断士は資格を活かすことで高収入につながります。さらに、専門性がある中小企業診断士だと、さらに高額な報酬を得ることも可能です。このように高収入であることも注目を集める理由の一つです。

試験勉強で学んだことがスキルになる

中小企業診断士試験は、試験科目に経営学会計学情報システムなどの様々な科目があります。それらの科目は全て仕事に関係しているので、試験勉強で身につけたことが全て仕事で活かせるスキルです。また、業種を問わず活かせるというメリットもあります。

中小企業診断士の勤務先

中小企業診断士は就職・転職活動や職場内でのキャリアアップに、とても有利な資格です。なぜなら、同試験は、試験科目に経営学、会計学、情報システムなどがあり、経営に関する幅広いスキルだけでなく論理的思考力が求められる試験です。そのため、同資格を保有するということは、高度なビジネススキルがあることの証明になるからです。また、企業に所属するのではなく、独立開業も考えられる資格なのです。

この章では、同資格の勤務先にどのようなところがあるのかを、中小企業診断協会の2016年のアンケート調査をもとに説明します。(参照:データでみる中小企業診士2016年版

経営コンサルタントとして独立

独立の最大のメリットは、収入が増えることだと言えます。自宅を事務所とする場合は、クライアントから支払われる報酬が、ほぼ全て収入になるというメリットもあり、事務所経営が順調にいけば年収1,000万円以上も可能です。

事務所を賃借するなら費用はかかりますが、自宅で開業するなら初期費用を含めた事務所費用はほとんどかかりません。実に、中小企業診断士の4割以上が経営コンサルタントとして独立しています。

経営コンサルティング会社

経営コンサルティング会社は給与が高いことで有名ですが、中小企業診断士なら就職がしやすくなります。経営コンサルティング会社の求人広告を見ると、税理士や社会保険労務士などの難関国家資格とともに、中小企業診断士資格保有者に対して、「歓迎」や「優遇」の文字を見かける頻度が多いです。

金融機関や一般企業

中小企業診断士なら中小企業の経営診断が得意と判断されたり、所属している金融機関から取得を勧められたりすることが多いです。実に、中小企業診断士の約8%が金融機関に勤務しています。

また、中小企業診断士資格保有者の約3割が一般企業に勤務し、経営コンサルティング業務を行っていません。ただ、同資格を取得することにより、「関係先から良い評価を得た」「資格手当が支給された」などの、プラスの評価を得た同資格保有者が多くいます。同資格を取得したことでビジネススキルがあると期待されるのでしょう。

中小企業診断士の将来性

前述のアンケートによると、6割以上の中小企業診断士が、経営コンサルティング需要が伸びることを予想しています。需要が伸びる理由には、新分野進出や新規創業などの支援や、高レベルの経営支援などが挙げられています。

やはり、昨今の社会情勢の変化へ中小企業が柔軟に対応していくためには、同資格保有者の経営コンサルティングが必要だと言えるでしょう。

AIに奪われる確率は0.2%

また、近年のAI技術の発達で、多くの職業がAIに取って代わられると言われています。それは、難関国家資格と言われている、税理士や弁理士などの士業も例外ではありません。

2015年に発表された、オックスフォード大学と野村総合研究所の共同研究によると、主な士業のAIによる代替可能性は以下のようになります。

士業 AIによる代替可能性
中小企業診断士 0.2%
弁護士 1.4%
司法書士 78.0%
社会保険労務士 79.7%
公認会計士 85.9%
弁理士 92.1%
税理士 92.5%
行政書士 93.1%

このように多くの士業の業務がAIに取って代わられると予想されていますが、中小企業診断士のAIによる代替可能性は0.2%と最も低い数字となりました。この確率は同資格保有者の仕事が、将来も安定しているということを示しています。

中小企業診断士には実用性がないのか

これまで説明した通り、中小企業診断士は高収入であり、やりがいのある資格です。しかし、同資格に対して否定的な意見があることも事実です。この章では、同資格に対する否定的な意見がどのようなものなのかを検証していきます。

独占業務がない

経営コンサルティング業務を行うために特定の資格は必要ありません。さらに、法律で規定された中小企業診断士でなければできない仕事はありません。つまり、中小企業診断士には独占業務は無いのです。

現状では、公認会計士税理士社会保険労務士などの国家資格保有者や、特定の国家資格を保有しない無資格者も、経営コンサルタント会社で経営コンサルティング業務を行っています。会計のスキルがある公認会計士や税理士、労務管理のスキルがある社会保険労務士が、専門的スキルを活かして経営コンサルティング業務を行うことに、誰も違和感を覚えないでしょう。

しかし、中小企業診断士試験は、経営コンサルティングの専門スキルを問う試験です。同試験に合格することは、経営コンサルティングに最も必要なスキルの取得、もしくは取得していることの証明になるのです。

経営コンサルタントにならないと役に立たない?

中小企業診断士は日本で唯一の経営コンサルタントの資格です。経営コンサルタントの資格であるから、それ以外の業務に携わる人にとっては、役に立たない資格であると思われるかもしれません。

しかし、前述のように金融機関や一般企業で、同資格を活かして働いている中小企業診断士が多いのは事実です。さらに、同資格を取得することで、周りから評価されたり信頼されたりするだけではなく、資格手当や昇進などのメリットもあります。

中小企業診断士になるには

これまで、中小企業診断士の将来性や仕事内容について説明してきました。
この章では、中小企業診断士の試験や難易度などについて説明します。

中小企業診断士試験の概要

中小企業診断士の資格を取得するには、1次試験に合格し、その後の2次試験に合格しなければいけません。1次は筆記試験、2次は筆記試験(短答式と論述式)と口述試験です。2次は筆記試験に合格した受験者が口述試験へ進めます。

ただ、中小企業診断士を名乗るためには、2次合格後に、実務補習もしくは実務従事(ともに15日間以上)を修了し申請を行う必要があります。ちなみに、実務補修と実務従事を合わせて15日間以上でも、登録条件を満たすことになります。

ちなみに、1次試験は受験資格がなく誰でも受験できます。そのため、幅広い年齢の受験生がいるのが特徴であり、1次合格者の最年少は17歳で、最年長は78歳です。また、2次試験は、1次試験に合格した年度だけでなく、翌年度も受験できます。

中小企業診断士試験の難易度

中小企業診断士試験に合格するためには、初学者であれば1,000時間以上を試験勉強に費やさなければ、合格ができないと言われています。合格率は、令和元年度の1次試験が20.1%2次試験が17.7%で、まさに難関国家資格と言える合格率です。

同試験の合格基準は少しだけ複雑です。1次試験は7科目があり、総得点数で60%以上、かつ、1科目の得点が40%以上です。2次試験は筆記試験は4科目があり、合格基準は1次と同じです。

そのため、この合格基準に対応するには、苦手科目の得点を得意科目で補うという得点の取り方は通用しません。合格するためには、苦手科目を作らずに全科目で得点を獲得することが重要です。

中小企業診断士に適正がある人

ところで中小企業診断士に適性がある人とは、どのような人なのでしょうか。
一般的に言われているのが、「物事を総合的に考えることができる」「コミュニケーション能力が優れている」という、2つの点で秀でている人です。

物事を総合的に考えることができる人

例えば、中小企業の経営診断を行う時に、一方向のアプローチだけでは問題点を見つけ出すことはできません。物事を総合的に考えて多方面からアプローチを行い、問題点を探していくことが必要となってきます。それは、中小企業診断士の試験科目が、7科目と多岐にわたっていることからも、同資格には総合的な視点が求められていることがわかります。

コミュニケーション能力が優れている人

中小企業診断士の主な仕事が経営コンサルティングであり、クライアントとのコミュニケーションが重要となってきます。コミュニケーション能力は現代のビジネスにおいては、必要不可欠な能力なので、当然のことを言っているように感じるかもしれません。

ただ、中小企業診断士のコミュニケーションの相手は職場内の上司や同僚ではなく、クライアントだということが、この能力に高いレベルを求める理由です。いかにしてクライアントの本音を聞き出すかが、企業の問題解決には重要となってくるのです。

さらに、聞く力だけではなく、伝える力も大切です。難しいビジネス用語を使い、クライアントが理解しにくい助言をしても、全く意味のないことなのです。クライアントをしっかり理解し、相手に伝わる助言でなければなりません。

まとめ

では最後に、中小企業診断士の将来性についてまとめておきましょう。

中小企業診断士の将来性まとめ
  • 経営コンサルタントをする中小企業診断士の4割が年収1,000万円以上
  • 活躍の場は独立、経営コンサルティング会社、金融機関、一般企業と幅広い
  • AIによる代替可能性は0.2%とあらゆる士業の中で最も低い

いかがでしたでしょうか。中小企業診断士は、試験の難易度も高く、1,000時間以上の試験勉強をしなければいけません。しかし、年収ややりがい、将来性などの魅力がたくさんある国家資格であると言えます。

特に、社会情勢の変化が著しい現代において、経営コンサルティング需要が見込まれ、さらに、AIに取って代わられる可能性が低い、ということは大変魅力的です。

この記事を読んで、少しでも中小企業診断士に興味を持たれた方は、同資格の受験を検討されてはいかがでしょうか。

監修 資格LIVE編集部
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