行政書士に将来性はある?〜現状やAIの脅威まで解説〜

これまでは当たり前だった日常生活が大きく変わりつつある令和の時代。今は働き方そのものも大きな見直しがなされようとしています。
「とりあえず、何か資格を取得しておこう!」と考える人も多いのではないでしょうか。

その中でも人気の高い資格のひとつが「行政書士」です。
今回は「行政書士」の将来性について考察していきたいと思います。資格取得を考えておられる人は勿論のこと、持ってはいるけど思うように資格を活かせていない方も、是非読んでみてください。

AIの普及が行政書士の仕事を奪う?

最近は急速に普及がすすみ、身近なところでもよく耳にするようになったAI(人工知能)。
これまで、人間にしかできないと思われていた作業もAIの著しい発達により、どんどん人間に代わって処理できるようになってきました。AIの最も得意とする分野は膨大な数のデータの処理や分析業務だといいます。行政書士が現在行っている業務においても、AIによって代替が可能になる部分も少なくありません。あるデータによれば、20年後にはおよそ90パーセントの仕事はAIでの代替が可能であるとの報告もあるようです。

「えっ、行政書士がいらなくなるの?」「行政書士には将来性がないじゃないか?」
と不安に思われたのではないでしょうか。

事務的な作業はAIに奪われる

確かに事務的な作業という部分では、機械による代替が行われやすいと言えるでしょう。
しかしながら、行政書士は官公庁に対して行うあらゆる手続きの専門家です。
そこには、単なる事務的な作業だけではなく、相談やアドバイスといったコンサルタントとしての役割も果しています。一人一人のニーズに応じた細かいアドバイスなどは、やはり人間でなければできません。
そして、それこそがまさに行政書士が存在する役割であり、今後もそのニーズがなくなることはないでしょう。

行政書士の現状

では現状、行政書士を取り巻く環境はどうでしょうか?

行政書士は増えている

現在行政書士として働いているのは約4万6千人です。日本の人口が2011年から減少傾向にある一方、行政書士の資格保有者数は毎年一貫して増加傾向にあり、ここ10年で約20%ほど増えています

これは、行政書士試験は弁護士や税理士といった他の法律系資格と比べて取得難易度も低く、また受験資格もないため、試験に気軽にチャレンジしやすいということが要因として挙げられます。

人口減少に伴って顧客数自体は減少しつつあるのに、行政書士は増えているため事務所間の競争は以前より激しさを増しており、報酬単価も下落傾向にあります

こうした状況では、独自の得意分野を持ったり、後に説明するダブルライセンスなどで優位性を獲得することが大切です。

ダブルライセンスで可能性が広がる

行政書士として活躍する方法のひとつとしてダブルライセンスを取得するという方法があります。

行政書士の魅力のひとつは、国家資格であるにも関わらず受験資格の制限がないということです。いくつになっても、また全くの初心者でも努力次第で資格を取ることができます。また、法律系の資格であるため、他の資格と組み合わせることで、活躍の場がぐんと広がります
例えば、

  • 行政書士と社労士…会社設立や労働者の雇用契約に関する手続きなど。
  • 行政書士とFP…相続などに伴う遺言書の作成や、遺産分割協議書の作成など。
  • 行政書士と宅建士…不動産の宅地造成に関わる書類の作成や、手続きの代行など。
いずれの仕事にせよ、法律に関しての知識は必要不可欠ですし、組み合わせて活かすことでビジネスチャンスも広がります。「○○に特化した行政書士」と専門性の高い仕事を受けることも可能となります。

また、行政書士からより難易度の高い司法書士へとステップアップをしていくことで、より専門性の高い法律家として活躍することもできます。
難しいと言われる法律系の資格としては、「行政書士」からスタートして、ランクを上げていくという方も多いようです。

行政書士って、どんな仕事をしているの?

ここで改めて、「行政書士」のお仕事について簡単に説明します。
「行政書士」の主な仕事は官公庁に提出する書類の作成や、その手続きの代行を行っています。

行政書士は「街の法律家」とも呼ばれており、その資格は国家資格として広く認知されています。書類の手続きを代わりに行うと一口にいっても、その種類は実に多岐にわたっており、法律の改正や、手続きの見直しなどにより、常に最新の知識を必要としています。
ですから、その大変さはありますが、反面やりがいもある魅力的な仕事でもあります。

行政書士だけが行うことができる「独占業務」とは?

行政書士は一般的に「代書屋」とも呼ばれることもあります。主に、個人や事業主、あるいは企業が官公庁に対して提出すべき書類を代理として作成し、手続きを代行することからそう呼ばれているのです。

行政書士が業務上、取り扱う書類は実に1万種類以上と言われています。これらの書類のうち「官公庁に提出する書類」の作成に関しては行政書士だけが取り扱いを認められる「独占業務」となります。

独立?企業勤務?選べる働き方

そもそも行政書士という仕事には、企業に雇用される行政書士という形態が存在しないため、「行政書士の仕事だけをしたい!」と考えている人は、行政書士法人や行政書士事務所で働きながら経験を積んでいく方法と独立する方法があります。様々な書類を扱うことで自身のスキルアップにもつながります。

  • 士業事務所または一般企業で働く

士業事務所、または一般企業で働くメリットといえば、なんといっても安定した収入が継続してもらえるという点です。特に日本人のこれまでの働き方の大半はサラリーマンとして安定した収入を…。という考え方が主流でしたから、まずは組織の中でキャリアを積んでおくというのは悪くないと言えるでしょう。

一般企業においては、行政書士としての業務はできませんが、資格を持っていることで許認可申請を取り扱うことが多い総務などの分野で活躍することができるでしょう。法人側からも有資格者は重宝される傾向にあるため、就職や転職にも有利になります。企業によっては資格手当を出す所もあるので、収入アップにつながることもあるようです。

  • 独立する

人生100年時代と言われている今、定年という概念がない独立した働き方というのも、大変魅力的ではあります。これから益々、少子高齢化が進むにつれて、年金だけでは不安と考えている人にとって、何歳になっても自分で稼げるというのは、心強いものです。
ですから、企業に勤めている場合でも、いずれは独立ということを視野に入れておかれることをお勧めします。そのためにも知識のブラッシュアップや、営業のノウハウ、マーケティング環境についての勉強をしておくことで、いざという時はスムーズに独立開業に向けて動くことができます。

拡大し続ける業務内容に対応していくには

前述のAIの導入もそうですが、新しい技術やシステムを取り入れるに従い、それを正しく使うために必要な法律の整備が急ピッチで進められています。また、これまであった法律についても、時代に応じて細かい見直しが常に行われています。
近年では、マイナンバーの整備や、企業における個人情報の管理などの厳格化、またドローンのような新しい技術についての使用についてなど、法整備が進むにつれて、行政書士が行う業務範囲もどんどん広がってきています

このような時代の流れに伴い、最新の事情に詳しい専門性の高い行政書士が新しい顧客を獲得し、ビジネスチャンスを広げています。また、非常事態の際には、助成金の申請や公的融資の申請などについての相談も増えているようです。深刻な現状に加えて、手続きの煩雑さに悩まれている事業主にとって、行政書士の存在は心強いサポーターとなっているようです。

更には、インターネットの世界でも行政書士のアドバイスを求める動きが出ています。
いづれにしても、常に最新の情報に注意を払って、また顧客のニーズを敏感に取り入れる柔軟さを持つことで、AI導入の波に飲まれることなく常に必要とされる存在としてあり続けることでしょう

これからの「行政書士」が目指すべきかたちとは

ここまで読んでいただければ、これからも「行政書士」が必要であるということは充分理解していただけたかと思います。インターネットなどでは「食えない資格」と言われることもありましたが、行政書士の資格は取得するメリットが高く、将来性のある資格だと言えるでしょう。

とはいえ、これまでのように「行政書士である」というだけで評価されるという時代ではありません。事務的な書類作成や、手続きの代行だけではAIなどといった機械による代替が行われてしまうのも残念ながら事実です。

一方で、簡単な事務作業を機械が代わりに行ってくれることから、自身は営業活動やクライアントとの対人業務に専念できることで、相手に寄り添ったきめ細やかなサービスを提供できるという考え方もあります。こういった点から見ても、新しい技術は、「行政書士」の仕事を奪うわけではなく、業務の効率化に役立つツールのひとつであると捉えた方がよいのかもしれません。

まとめ

最後に、行政書士の将来性についてまとめておきましょう。

まとめ
  • 事務的な作業はAIによる代替が行われやすいが、コンサルタント業務などは今後も需要がある
  • 現状は行政書士が増えていて競争が高まることが予想できる
  • 専門分野やダブルライセンスで活躍の場を広げることが重要
  • 拡大する業務内容をAIに任せ、顧客のニーズを敏感に取り入れる柔軟さが必要

「行政書士」の将来性についておわかりいただけましたか?

資格取得までの道のりは決してやさしいものではありませんが、その分リターンも期待できる一生モノの資格であることは間違いありません。

頼れる「行政書士」になるために、勇気を出して一歩を踏み出してみてください。

■監修者から一言

AI以外にも、官公庁の手続はオンライン化が進んでおり、書類作成の煩雑さは軽減されつつあります。その分、単に書類作成をしているだけでは、行政書士の仕事はなくなっていくでしょう。

しかしながら、様々な許認可がある中で、それぞれの法律に基づき、どういった場合に該当するのか、しないのか、どんな許認可を申請すればよいのかなど、実際は書類作成前のコンサルティングが業務の幅を占めています。

作成する書類の背景には人がおり、行政書士は、その人の事情や思いを聞き取りし、サポートする仕事です。AIやオンライン化にはない人とのコミュニケーションが重要になってきます。行政書士は、機械では測れない人間の様々な背景を書類に落とし込み、見える化していきます。

今後もAIやオンライン化が進むと思われますが、人自体をサポートする行政書士は、必要とされ続けるでしょう。

監修 石井麻里(行政書士)

兵庫県三田市で開業している行政書士。2017年に行政書士登録。
主に相続・遺言、ビザ申請や帰化申請、HACCP(食品衛生)など幅広く取り扱う。