行政書士の難易度は?〜合格率・合格点を解説〜

行政書士の難易度は?〜合格率・合格点を解説〜

「街の法律家」として、人気の高い行政書士の仕事。
そのやりがいと、業務の内容から大変人気のある資格の一つですが、
「国家資格ではあるけれどどの位難しいのか」「仕事をしながら目指そうと思っているけど、どの位の勉強時間が必要なのか」
などといった、疑問の声をよく聞きます。

そこで、今回は人気の資格「行政書士」の難易度はどのくらいなのか、他の国家資格との比較を交えて検証してみました。資格取得を考えている人なら、是非知っておきたい事を様々な視点から考察していきたいと思います。

行政書士の難易度は高い?

行政書士の仕事というものは、許認可申請や遺産分割協議書など、官公庁に提出する書類を作成したり、手続きを行うのが主な仕事となります。そのため、法律についての幅広い知識が必要となる資格ではありますが、他の法律系の資格に比べて難易度が高いというわけでもありません

ですから、法律系の仕事に就きたいと考えている人が最初に行政書士の資格取得を目指して、基礎知識を身につけるということもよく聞きます。難易度はあるものの法律の事前知識がない人でも強い意思と、事前の勉強で試験内容をしっかり押さえておくことで、誰でも挑戦できる資格であると言えるでしょう。

行政書士の合格率は?

行政書士の直近10年間における合格率は10%弱~15%の間を行き来しています。同じ法律系の国家資格試験でいうと、社会保険労務士は約6%、司法書士においては3%前後であることから、これらに比べると比較的合格率が高い資格と言えると思います。

資格取得に向けた勉強を始めるにあたって、合格率を意識するのはとても重要です。合格率ひとつにしても、ただの数字として捉えるのではなく、どうしてその数字になるのか、年度によってバラつきがあるのか、など試験の傾向や自分自身がどの辺りにいるのかということを客観的に見つめることができます。

行政書士の合格率は上昇傾向にある

実を言うと2012年以前の5年間については合格率が平均で7.9%と一桁台を推移していました。そこからは緩やかな上昇を続けておりここ数年ではずっと二桁台をキープした状態が続いているのです。このことから、以前に比べて合格率が上がってきていると判断することができます。

これについては、以前に比べて試験の難易度が少し軽減されたということもあるでしょうが過去問のデータを分析することで、試験対策が立てやすくなってきたとも言われています。行政書士資格は人気が高いことから教育機関も試験対策に力を入れている結果が合格率の上昇に繋がっているという見方もあるようです。

行政書士の難易度を上げている3つの要因

決して簡単とは言えない「行政書士」の試験。その難易度を上げているのが、試験範囲の膨大さ、足切り点の存在、記述式問題が出題されるという3つの要因にあると言われています。
行政書士試験を勉強するうえでこの3つを意識することはとても大切です。

ここではこれらの要因について、詳しく見ていきます。

試験範囲の膨大さ

行政書士試験の試験科目は大きくわけて「法令科目」と「一般常識」の2つに分けられます。更に、「法令科目」では、「基礎法学」、「憲法」、「民法」、「行政法」、「商法」、「会社法」が出題されます。「一般常識」では「政治・経済・社会」、「情報通信・個人情報保護」、「文章理解」から出題されます。きちんと勉強していないと点数を落としてしまう分野ですから、しっかりとした対策が必要です。

これらの科目から行政書士の仕事に関係した内容が出題されるのですが、この科目数の多さが行政書士の試験を難しいと思わせている大きな要因の一つです。

足切り点があるということ

行政書士試験では、法令科目の得点、一般知識科目の得点、全体の得点の3つそれぞれに合格ラインが設定されているため、それら全てにおいて一定の点数を取らなくてはなりません。

法令科目:46問題 244点中122点以上
一般知識科目:14問 56点中24点以上
全体:180点以上

この点数を取る必要があります。このうち、どれか一つでも満たさなかった場合には、残念ながら合格とはならないのです。

従って得意科目だけで点数を稼ぐ、あるいは配点の高い科目を重点的に勉強して点数を取る、苦手科目を捨てて、その他の科目でカバーするといった、受験テクニックはほとんど通用しません。
配点がそれほど高くない一般知識科目も含めて各科目をまんべんなく学習して得点を積み重ねてかなくてはならないというところも、行政書士試験の難易度を押し上げている要因の一つと言えるでしょう。

記述式問題

行政書士試験では選択式の問題だけではなく、民法と行政法からそれぞれ記述式の問題が出題されます。これは、問題文を読んで、その問題に適用される法律を判断し、どのような結論に達するのかを40字程度にまとめるという形式の問題が出題されます。

該当分野の法律について、正確な知識を必要とし、それを体系的にまとめて文章で回答するという力が必要になります。当然選択式に比べても、より高いレベルでの理解力を求められることになるので、難易度も選択式よりは高くなります。

出題範囲は基本論点が中心となるため、常日頃の学習の中で記述式に必要となるようなワードを意識するなどの注意が必要です。また、記述式の問題では、完答でなくても部分点を貰えることがあります。万が一わからない問題が出題されても、白紙で提出するのではなく、自分の分かる範囲である程度まとめることができるように、普段の演習課題で訓練しておきましょう。

単純な合格率の数字に惑わされない

合格率、難易度の面から見ても決して易しいものではない「行政書士試験」。
実際ここまで読んでこられた読者の方々の中には「自分には無理かもしれない。」と学習を始める前から、諦めてしまっているのではないでしょうか。

しかし、実際の合格率はそこまで低いわけではないと考えられます。

「それって、どういうこと?」と思われた方もいることでしょう。
実は「行政書士試験」というのは受験資格を特に必要としない、つまり誰でも受けることができる試験となっています。

「義務」として受けるわけではないことから、あくまでも自分の意志でモチベーションを維持しつつ勉強しなければならない人が多いということです。そのため、受験の準備も十分にできずに本番を迎える人も一定数いると考えられます。

しっかりと勉強をして、試験に臨んだ人だけを母数として考えれば合格率が高くなるのは間違いないでしょう。公表されている数字にのみ惑わされることなく、きちんと知識を積み重ねて試験対策をしていけば決して手の届かない難関資格ではないのです。

行政書士の試験形式と合格点について

ではもう少し具体的に試験の内訳を説明していきたいと思います。
より詳しい難易度を把握するためには、どのような形式の試験が出題されるのか、合格までには何点取ることが必要なのかといった具体的なイメージをきちんと掴んでおくことが大切です。

問題数と試験時間

行政書士試験では、180分で60問を解かなくてはなりません。
60問の出題形式については、「法令科目」が択一式(選択肢は5肢もしくは多肢択一式で選択)として合計で34問の出題、記述式(行政法および民法から出題)から2問の出題、「一般知識等科目」から択一式(5肢択一式)として合計で14問の出題の内訳となっています。

表にするとこのようになります。

科目 出題形式 問題数
法令科目 択一式

34問

法令科目 記述式

2問

一般知識等科目 択一式

14問

合計

60問

それぞれの配点でいうと、5肢択一式問題が各4点、多肢択一式問題が各8点、記述式問題が各20点となっており、記述式問題に関しては、完答でなくとも部分点を貰えることがあります。

60問を180分で読み解くというのはかなりのスピードと集中力を要するタフさが必要となります。更に、記述式問題もあるということから考えても、択一式問題に関してはあまり時間を掛けずにかなりスピーディーに解いていかなくてはなりません。

正答率を高めていくのは勿論のことですが、普段の問題演習を解いていく場合でも、時間配分を意識して解いていくことが重要になってくるでしょう。

合格点の基準

行政書士試験では、「法令科目」が244点満点、「一般知識科目」が56点満点の、合計300点満点で構成されています。
その年に出題された難易度によって合格点が変動する相対評価ではなく、難易度の変化が影響せず、必要点数を満たしているかどうかが重要な絶対評価によって合格が決まる試験となっています。

ただし、合格するには「法令科目」で122点以上、「一般知識科目」で24点以上という概ね5割以上の正解と、合計で180点以上という6割の合格ラインが設けられており、どれか一つでもラインに満たさなければ無条件で不合格となってしまいます。

例えば「法令科目」で160点、「一般知識科目」で20点の合計180点であった場合、「法令科目」と合計点では合格ラインに達しているものの、「一般知識科目」では合格ラインに達していないということで、不合格となってしまうのです。

両科目ともボーダーラインをクリアすることは大前提としてありますが、それだけでも総合計では足りなくなってしまうので、更にプラスして得点を稼がなくてはなりません。苦手科目を少しでも無くすことと、得意分野を伸ばしていくという二つが合わさって初めて合格を手にすることができるでしょう。

知識ゼロから始めても大丈夫?

ここまで述べてきて、「法律に関する知識が全くない状態からでも大丈夫なのか?」と心配された人もいるのではないでしょうか。

確かに法律系の資格というのは、簡単なものではありません。年度によって多少の差はあるものの一定の理解が無ければ合格できる訳がないのです。資格試験が難しいのは、行政書士の仕事そのものが、法律というものを正しく理解して、個人や企業が持つべき権利を守らなくてはならないからに他ならないからです。

そのことをきちんと踏まえた上で学習していけば、決して手の届かない資格ではないといえます。比較的身近な法律の知識を必要とする資格ですから、そこまで難解ということもありません。

むしろ法律の基礎知識をしっかりと身に付けて、基本問題を確実に回答できるようになれば、それまで予備知識の無かった人でも十分合格できます。合格率や採点方式に怖じ気ついて挑戦する前から諦める必要はありません。むしろ、勉強した分だけ知識を習得することができ、合格へと近づくことができるでしょう。

合格の目安となる勉強時間はどの位必要?

行政書士の試験は毎年1回、11月の第二日曜日に行われています。一年に一度しか受験のチャンスがないので、きちんとした計画性を持って試験に臨まなくてはいけません。

行政書士試験の場合必要な勉強時間はどの位になるのかは気になるところです。
一般には600時間は必要だと言われているようです。法律の予備知識がなく、ゼロからのスタートで目指す場合は、800時間は必要になってくるかと思います。しかも独学で頑張りたいとなると、よほどスケジュールをきちんと組んでおかないと、途中で投げ出したくなるかもしれません。

この600時間を一日約3時間確保するとして、おおよそ7か月かかります。800時間なら、9か月弱といったところでしょうか。ただしこの時間には個人差があると思いますので、あくまでもひとつの目安だと考えて下さい。

ですが、ぎりぎりで追い込むことがないよう、ある程度の余裕をみて受験までの時間配分をした方が良いでしょう。特に仕事をしながらの勉強は思い通りに進まないのがむしろ普通なのですから、自分を追い込み過ぎて疲労を溜めてしまうことがないよう、早い段階から取り組んで自分の学習ペースを掴むことが大切です。

科目別勉強時間の配分はどうするか

これもあくまでも目安の一つではありますが、時間をかけて取り組むべき科目といえば、やはり行政法と民法になるでしょう。これらの科目は出題数が多く、配点が高い記述式問題も出題されるため、時間をかけてでもきちんとした理解をしておく必要があります。
合格基準には小科目ごとの足切りはないので、得点効率の高い科目から優先的に学習していくのがオススメです。

ただし、注意しなくてはならないのが大科目である「法令科目」と「一般知識科目」には足切り点が存在するということです。そのため、偏った勉強では合格できません。毎年のように、「法令科目」と総合計では合格点に達しているのに、「一般知識科目」で涙を呑む人が一定数いるのです。

なるべく苦手分野を作らないような計画を立てて、学習していくことが望ましいといえるでしょう。

その他の国家資格と比較してみる

法律系のほかの国家資格と比べて、行政書士の資格はどの位の難易度なのか。
ここでは、聞いたことがある法律系の国家資格と詳しく比較していきます

宅地建物取引士(宅建士)

行政書士と並んで、取得しやすい国家資格として人気の高い宅建士ですが合格率に関していえば15%前後と、行政書士よりはやや難易度が低いようです。合格までに必要だと言われる勉強時間は約300時間だと言われています。
宅建試験における民法の出題範囲は行政書士試験と比べても狭く、内容もそこまで深いものではありません。
また、宅建士は安定して仕事に繋がる資格でもあるため、行政書士とのダブルライセンスを目指すことも充分に可能だと言えるでしょう。

社会保険労務士(社労士)

社労士の合格率は6%前後と行政書士に比べるとやや難易度が高くなっています。合格までに必要とされる勉強時間は1000時間と言われています。また、行政書士の資格を持っていると、学歴や実務経験が条件に達していなくても社労士試験を受けることができます。
この2つは資格の範囲が全く異なるので、行政書士の資格を取得してから更に違った分野を学ばなければいけません。取得する価値は高いですが道のりは簡単ではないでしょう。

司法書士

行政書士同様に書類作成を中心とした業務を行い、それぞれに独占業務を持っています。
しかし、難易度としては、司法書士試験の方が圧倒的に難しく、合格率は僅か3%程度となっています。試験範囲も膨大で、合格までに必要な勉強時間は3000時間ほどと言われています。もしもダブルライセンスを目指すのであれば、先に行政書士を取得して法律の基礎知識をある程度持ってから司法書士の資格取得を目指すのが良いかと思います。

行政書士は独学で取得できるか

行政書士は難易度が高く、独学で取得するには高い意識と継続して勉強できるモチベーションを最低でも半年以上維持し続けなければなりません。不可能ではないものの、かなり困難だと言えます。
また、出題される法律が多岐にわたるため、重点を絞った学習が必要です。
ネットなどでは「独学で取得しました!」という声を聞くこともありますが、非常に困難だというのが本当のところです。

それでも独学で合格を勝ち取りたいという人のために、独学の際の勉強方法について紹介していきます。

しっかりとしたスケジュールを立てる

行政書士の試験は、何度も言うようですが試験範囲が膨大でありそれぞれについてきちんとした理解をしておかなくてはなりません。
その為にも試験日までの日から逆算して、いつ頃、どの部分を、どの程度学習するのかを大まかでもよいですから決めて学習した方が良いでしょう。

その際に気を付けなければならないのが、詰め込み過ぎないということです。体調を崩してしまったり、余裕がなくなるとモチベーションも下がってしまうことになるので、自分の生活リズムに合わせたスケジュールを組むようにしましょう。

重要な所はしっかりと押さえる

行政書士試験は科目ごとの配点が異なり特に民法及び行政法の配点が全体の65%を占めていることから、この2科目は重点をおいて学習していきましょう。
具体的な学習方法としては、両科目とも条文や用語の知識が基礎となっているため、テキストを繰り返し読むことで知識を定着させることが肝心です。

また、この2科目からは記述式問題も出題されるので、これらの対策として、キーワードを正しく使うことができるようにしておくことも大切です。
記述式問題は配点も60点と高い問題であることから単なる暗記ではなく、その用語の適切な使い方とその意味を意識した勉強が必要となるでしょう。

過去問はしっかりとやり込む

独学で勉強する際には過去問を用いて自分が得た知識のアウトプットを行うことがとても大切になってきます。試験の出題傾向や、出題頻度の高い問題を知ることもできますし、自分の理解度を客観的に知ることができるからです。

ここで気を付けるべきことは、単なる丸つけに終わらせないことです。答えを丸暗記するだけに終わらないよう、出題されている問題の意味をきちんと理解することで、問題内容が変更になった場合でも慌てることなく対応できます。

テキストと問題集は慎重に選ぶ

独学の際、最も気を遣うのがテキストと問題集の選択です。
あまり分厚くなりすぎても、読む気がなくなりますし、あれもこれもと何冊もそろえるのもあまりおすすめできません。できれば試験に出るところだけを分かりやすく無駄なく書かれてあるものを求めることが望ましいでしょう。

また、法律は毎年のように改正がされていることから、必ず最新のものを使うようにしてください。テキストの内容に準じた問題集が出ていることが多いので、合わせて学習することで知識をインプットした後、問題集でアウトプットして、理解度を確認していくことで、より高い学習効果が得られるでしょう

通信講座がおすすめ

独学では、自信がないという方には通信講座の活用をお勧めします。
独学では、どうしても壁にぶち当たることが一度ならずあるかと思います。
また、テキスト選びや、スケジュールの立て方など一人では難しいと思えることでも通信講座を利用することで、学習に専念することができるでしょう。
また、初期費用を払うことで、「元手がかかっているのだから」と合格へのモチベーションも下がりにくくなります。

まとめ

では最後に、行政書士の難易度についてまとめておきましょう。

行政書士の難易度まとめ
  • 合格率は10%弱~15%で、法律系資格の中では比較的高い
  • 試験範囲の膨大さ、足切り点の存在、記述式問題が難易度を上げている要因
  • 180分で60問を解かなければいけないためスピードが重要
  • 必要な勉強時間は600〜800時間
  • 独学も不可能ではないが、範囲が広いため通信講座がおすすめ

「行政書士」の業務内容は多岐にわたり、幅広い知識と社会的にも大きな役割を担っている今後益々活躍が期待される仕事となっています。

行政書士試験は決して簡単とはいえませんが、受験資格がなく、意欲さえあれば初心者でも取得が十分可能な資格です。

法律系の資格を受けようか迷っている人、何か自分の身になる資格を手に入れたいと思っている人は是非「行政書士試験」に挑戦してみてください。

■監修者から一言

行政書士試験は、法律系の試験の中では、受験資格もなく、比較的挑戦しやすい試験です。

他の法律系の試験に比べて難易度は低いとされますが、法律の基礎、憲法、民法、商法から、生活にはあまり馴染みのない行政法まで、比較的広い範囲から出題されます。

一方で、行政書士試験には、法律系試験には珍しい「一般知識」と呼ばれる科目があります。「一般知識」とはいえ、法律関係の問題が中心ですが、時事問題や読解問題も出題されます。いわば、就職試験のような問題で、それらが得意な人には大きな得点源になります。

独学は難しいですが、自分のペースで進められるメリットがあります。途中で挫折しないように計画的に進めて、苦手科目や理解しづらい科目は、通信教育などをうまく活用すると良いでしょう。

監修 石井麻里(行政書士)

兵庫県三田市で開業している行政書士。2017年に行政書士登録。
主に相続・遺言、ビザ申請や帰化申請、HACCP(食品衛生)など幅広く取り扱う。