一級建築士の平均的な年収、給料、収入は?職種や企業について比較解説!

今回は気になる一級建築士の年収や収入について、一級建築士の「onearhi」さんに解説して頂きました。

資格名から聞くイメージだと、年収は高くみえますが実際はどうなのでしょうか。仕事の内容も気になるところですね!

 はじめに、一級建築士の年収と職種のイメージについて

最近は安藤忠雄や隈研吾などの有名建築家が、スカイツリーや東京オリンピック国立競技場の設計によりメディアに出る場面も多くなり、一般の方にも建築家のイメージが定着してきているかと思われます。

実際は建築家=一級建築士ではないですが、≒のイメージで一級建築士を目指す方も多いのではないでしょうか。

 医師や弁護士と同様に、一級建築士は建築のスペシャリストであり、資格を持っているだけで就職には困らないイメージをもっておられる方も多いかと思われます。

また、医師、弁護士よりは受験の難易度は低いイメージもあり、年収は比較的高く、やりがいのある職業であると思われている方が多いのではないでしょうか。

実際には、そういったイメージとは違い、資格を持っているだけでは食べていけないケースも多々あります。

私のまわりでも一級建築士を取得し事務所を開設している方もいますが、なかなか思うように仕事を受注できず、下請け仕事ばかりで毎月の給料が安定していない事務所があります。

また、一級建築士が活躍する場は多岐に渡り、所属する場面によって、収入にも大きく影響してきます。一般的には上記で上げた建築家(≒建築意匠設計)をイメージされている方が多いと思いますが、設計の分野だけでも、建物をデザインする意匠設計以外に、構造計算を専門にする構造設計者、空調(エアコン)や換気、トイレ等の衛生関係等を専門に設計する機械設備設計者、照明や太陽光発電や受変電設備等を専門に設計する電気設備設計者が存在します。

さらに、積算専門や申請専門、BIM専門等々それぞれの専門分野が存在します。小規模な住宅であれば、意匠設計・構造設計・設備設計・申請まで全て一人の建築士が行うことがありますが、中規模、大規模な建築になりますと一人の建築士では設計出来ませんので、各専門分野の建築士が集まり、一つの建築を造り上げていきます。

面白いことに、下段の企業規模別年収でも挙げますが、全ての作業を一人でこなす建築士よりも、専門分野で設計する方が、年収は高い傾向があります。また、インターネットで一級建築士の年収を検索すると年収800万円以上の求人広告が多数表示されます。

一級建築士は高年収なイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、所属する企業によっても大きく異なります。

私は大手ハウスメーカーと組織設計事務祖に所属してきた経歴がありますので、その目線から一級建築士の待遇や年収について考察し、ご説明していきたいと思います。

一級建築士の年収について、下記の3項目から考察したいと思います。
※各データについては、「賃金構造基本統計調査」、「国税庁の民間給与実態統計調査」より参照しております。

1、全業種からみた一級建築士の平均年収について
2、一級建築士の所属する企業規模別年収について
3、一級建築士の年代別の年収について

全業種からみた一級建築士の年収について

一級建築士の平均年収については、「賃金構造基本統計調査」より下記とあります。

全体:642万円

男性:653万円
女性:560万円

まずは全職種の平均と比べてみます。「国税庁の民間給与実態統計調査」では、全体441万円・男性545万円・女性293万円とあり、一級建築士の平均給料は比較的高いことが分かります。

また、一級建築士の平均年収男女差は約100万円ですが、他の職種に比べると差が少ないことも分かります。たしかに、私の所属する組織設計事務所も男女関係なく年収は同じですので、一級建築士の男女間の差はあまりないように感じます。

業種別年収ラインキング(賃金構造基本統計調査調べ)では1位電気・ガス・水道業、2位医療福祉、3位卸売業小売業・・・・11位建設業、12位不動産業と下位に位置します。よって、建設業界は全体的に見れば年収は低い方になりますが、一級建築士の年収は業界内では、最も高い位置になると思われます。

 一級建築士の所属する企業規模別年収について

一級建築士の所属する企業規模別年収については、「賃金構造基本統計調査」より下記とあります。

10人~99人  :591万円 
100人~999人 :640万円
1000人以上  :800万円
合計      :642万円

この企業規模について、それぞれどのような企業が該当するか、意外と知られていないかと思われます。この企業規模で一級建築士として目指す方向も大きく変わってくると思いますので、具体的に企業名も挙げて説明していきたいと思います。

10人~99人規模については、主に住宅の設計を行う設計事務所や、工務店等が該当します。組織設計事務所の下請けとなる小規模設計事務所や積算事務所、確認申請や省エネ申請等の申請業務を請け負う設計事務所等、この規模の事務所は無数に存在すると思われます。また、アトリエ系の住宅をメインに手掛ける設計事務所や工務店については、10人未満規模の事務所も多数存在します。統計では、一級建築士として活躍する場としては最も年収の低い位置に該当します。

100人~999人規模については、大規模な建築を手掛ける組織設計事務所が該当します。有名なところでは、虎ノ門ヒルズ設計の日本設計や、グランフロントや歌舞伎座タワー設計の三菱地所設計赤坂サカス設計の久米設計などがあります。マイナーな所では発電所を設計する東電設計やニュージェックがあり、これらの組織設計事務所では、建築の専門家だけでなく土木の専門家や環境の専門家も所属しており、都市全体を設計することまで手掛けております。日本の有名な大規模建築を手掛ける組織設計事務所の殆どはこの規模に該当しております。

アトリエ系の設計事務所では、世界で最も有名な日本の建築事務所である安藤忠雄建築研究所や、国立競技場を設計した隈研吾建築都市設計事務所、プリツカー受賞の伊藤豊雄建築設計事務所等、名立たる設計事務所もこの規模に該当します。組織設計事務所とアトリエ系事務所が同規模に存在しますが、それぞれ一般社員での収入については、組織設計事務所の方が高いと聞きます。ただし、アトリエ系設計事務所の所長になれば、桁違いに年収は高くなります。

1000人以上については、大手ハウスメーカー、ゼネコン、一部の組織設計事務所が該当します。
この規模になると、一般の方でも知っている企業が名を連ねます。ハウスメーカーでは大和ハウス、積水ハウス、セキスイハイム、住友林業などなど皆さんが知っている企業ですよね。

ゼネコンですとスカイツリーを手掛けた大林組、アベノハルカスを手掛けた竹中工務店等があります。ゼネコンの中でも売上高、社員数共に規模が最も大きいのは清水建設で、建築分野だけでなくダムの建設等土木分野でも大きな工事を請け負っております。

組織設計事務所では、上記の100人~999人規模が殆どであることを記載しましたが、日本では2社だけ1000人以上となる組織設計事務所があります。1社目は売上高が組織設計事務所の中で毎年1位であり、渋谷ヒカリエ、ミッドタウン、東京ドームなど日本の有名な大規模建築物を手掛けている日建設計です。

日建設計は日本だけでなく、世界の大規模建築物も手掛けており、世界の設計事務所の中でもラインキングは上位(2019年では世界2位)に入ります。あと1社は、組織設計事務所売上高第2位のNTTファシリティーズです。名前の通り、NTTグループとなり社員規模は組織設計事務所の中では1位になります。この企業規模に入社すること自体、難易度が高い方だと思いますが、入社することが出来れば、年収も高く安定する可能性が高くなります。

一級建築士の年代別の年収について

一級建築士の年代別年収については、「賃金構造基本統計調査」より下記とあります。

20歳代  391万~ 500万円
30歳代  643万~ 663万円
40歳代  670万~ 807万円
50歳代  772万~ 787万円
60歳代  605万~ 454万円

やはり他業種に比べ、平均年収は高いように見えます。また、年齢が上がるにつれ年収も上がっていきます。私は20歳代大手ハウスメーカーに所属しておりましたが、上記の平均よりは多い方でした。

ハウスメーカーは個人の成績により、大きく年収が変わることも特徴です。20歳代で1000万円を超える方もいましたが、下は300万円を下まわる方もいました。また、ハウスメーカーは20歳代~40歳代までは成績により年収が高くなる可能性がありますが、管理職となれば一気に年収が落ち上記平均ぐらいになると思われます。

30歳代~40歳代にかけて、私は組織設計事務所に所属しましたが上記の表のとおりの年収です。私の周り(ハウスメーカーと組織設計事務所でのつながり)を見渡しましても、大きくかけ離れていない印象です。また、ハウスメーカーと同様、こちらも40歳を超えて管理職となれば、残業等もつかず年収が下がる印象があります。

一方、我々の下請けとなる小規模な設計事務所や、アトリエ系の設計事務所については、大部分の事務所が上記の平均年収を大きく下回ると思われます。

特に、アトリエ系の設計事務所においては、年収を求めるのではく、作品を残していくことや、設計のやりがいを求め就職する方が多いと思われます。アトリエ系設計事務所でも、超人気のある事務所については、所長の年収は上記平均より高いところもあります(ただし、一般所員の年収は平均以下が多いです)が、多くの事務所は平均以下だと聞きます。

また、小規模な設計事務所であっても+αの強みを持っている事務所については例外で、そのような一部の小規模設計事務所は上記平均より高い年収の所もあると聞きます。

60歳代で年収が一気に下がって見られるのは、定年退職によるものだと思いますが、実は、この業界は定年後も技術さえ蓄積出来ておれば需要のある職種でもあります。組織設計事務所での設計照査サポートや、経験が必要とされる現場監理業務等、いままでの技術を活かした仕事は定年後も引き続き請け負うことが可能な職業でもあります。

まとめ

他業種に比べて平均的には高収入な一級建築士ですが、実際は非常に上下の幅も大きな職種であると思います。上記で述べたように、毎月の経営もままならない事務所や、大手ハウスメーカーでも成績が悪ければ、年収300万円以下の場合もあります。

最悪の場合は、職を失い技術派遣として生活している人もいます。逆に、企業に属せず自分で事務所を構え、コンペ等に入賞し雑誌に掲載されるようになれば、年収数千万円を稼ぐことも可能です。

一級建築士として、ある程度の企業に属していれば平均以上の生活を送ることも可能と思いますが、自分がやる気になれば、更に大きな年収を得ることも可能な夢のある職種だと思います。

一級建築士として活躍する場は上記の通り多岐に渡ります。どの環境においても、最終的には、いい建築を造り社会に貢献することにつなげられることが、一級建築士としての使命であり、最も重要なことには間違いないと思います。

その中で、自身の興味のある分野と収入のバランスを図り、その分野でのスペシャリストとなっていくことが、社会に貢献する建築につながるものだと思います

執筆・監修 onearhi

芸術学部建築学科を卒業後、ハウスメーカーメーカーにて住宅の設計販売に携わる。
一級建築士事務所開設を夢に、ハウスメーカーを退職し資格学校へ通うが、そこで現職場の先輩にスカウトされ組織設計事務所に所属する事になる。
一級建築士試験に一発合格し、組織設計事務所にて主に学校、公民館、道の駅、発電所等の幅広い用途の公共建築物の設計を行なっている。
一級建築士建築士の他に、インテリアプランナー、建築積算士、casbee評価員の有資格者である。
2020年、実務経験と建築知識を活かして建築系のWEBライターとして始動。

Twitter:@0ne_archi