【徹底分析】社労士の開業は大変?廃業率や失敗しやすい人の特徴とは

【徹底分析】社労士の開業は大変?廃業率や失敗しやすい人の特徴とは

「士業の中でも社労士は独立・成功しやすい」という話を耳にしたことはありませんか?

本当にそうだとしたら、世の中にはもっと社労士が多いはずですし、第一、独立・開業に伴うリスクも避けられないと考えるのが普通ではないでしょうか。

いわゆる「士業」の中でも、人気の高い資格の一つが「社労士(社会保険労務士)」だと言われています。

社労士試験の合格者数は、ここ10年ほどは2500~4000ほどで推移していますが、法律系の資格の中では比較的難易度は易しめで、実際の仕事も、会社で働いたことのある人間であれば想像しやすいというのが、人気のポイントのようです。

ですが実際には、独立開業しても開業して長く続けている人の割合はそれほど多くありません。

社労士として開業するに当たり、抑えたいポイントの概要は次の3つです。

  • 独立開業する人も多いが、やむを得ず廃業する人も多い
  • 結果を残せない人にはいくつもの共通点がある
  • 成功に対するモチベーションを保ち、仕事への向き合い方を心得ている

ただ漠然と独立開業に憧れるだけではなく、社労士としての開業の失敗の原因と注意点について、見ていきましょう。

社労士資格取得後のルート

社労士の資格取得後にそれを仕事として活かす方法は、「一般企業内での労務関係の管理」「社労士事務所への就職や法人設立」「独立開業」のパターンに大別できます。

しかし、実際には社労士事務所の求人自体が少なかったり、一般企業内においても様々なしがらみから資格を活かしにくかったりという事情から、約半数の人が「開業する」と言われています。

他の士業と比較した場合、単発での仕事受注にとどまらず顧問契約を結ぶことが多く、長期的な売り上げが見込めると言われていますから、そうした理由も社労士資格の人気に結びついているのでしょう。

ただし、もちろん「開業しただけで稼げる」と安易に考えるのは危険です。

収益が安定してくる前に、廃業してしまうというのは決して珍しい話ではないのです。

独立開業の失敗率

社労士に限らず、独立開業を目指して士業を目指す方は多いようです

ただし、ノウハウや人脈がないと士業は成功しにくいのが現実で、そうした現実にぶつかって廃業してしまう人は、士業全体の6割を占めると言われています。

特に開業3年以内の廃業が目立つようで、安定的に長期経営している方はそう多くはないでしょう。

もっとも、廃業の理由の中には「年齢を理由とした引退」「死亡廃業」も含まれていますから、全ての廃業が「開業の失敗」によるものではありませんが、安定経営が難しいというのは、容易に推量できます。

独立開業の失敗の原因

失敗には、必ずその原因があるはずです。

独立開業失敗の理由として、失敗者に共通することが多い原因事例を見ていきましょう。

強すぎる自尊心

人間は誰もが「プライド」を持っているものです。ですが、そのプライドに縛られて受注する仕事の内容にこだわりすぎてしまうと、クライアントは不安・不満を感じてしまいますから、仕事を頼みづらくなってしまうでしょう。

相手からは柔軟性に欠けた人間と判断されてしまい、当然のことながら受けられる仕事は限られてしまいます。

また、独立開業の理由として「人間関係への苦手意識」を上げる方がいらっしゃいますが、苦手意識が強すぎる故に、人に助けを求められないというケースも、自分の成長を妨げてしまうでしょう。

同業者交流会なども「ライバルが集うから」と避けていると、自分の固定観念のみにこだわりがちになってしまいますから、他者からの視点・盲点に気づきにくくなっていて失敗に直結しがちです。

人に任せられない性分である

人一人ができる作業量には自ずと限界がありますから、従業員を雇い、自分が手の回りきらない仕事や作業を彼らに頼むというのも、効率よく仕事を進める方法の一つです。

他の士業の人とつながりがあったり、同業者でも得意分野が異なる場合には、二次的に相談者を紹介してもらうことも可能でしょう。

何よりも、一人で解決しようとすると視野狭窄に陥ってしまい、クレームを招きかねないのです。

最初から大きな成果を求めすぎる

開業直後の社労士に、大きな案件をいきなり任せる勇気ある方は、あまりいないでしょう。

運良くそのような案件を任されたとしても、そのクライアントから継続して仕事を任せていただくには、一見些細な案件でも丁寧に取り組んでいくことが大切です。

当たり前のことですが、そうした努力や活動を地道に続けることで相手方から信頼してもらわないと、次の仕事や収入には結びついていきにくいものです。

そもそも仕事が自分に合っていない

自覚しているかどうかは別にして、必ずしも仕事を一生懸命やったから成果に結びつくとは限りません。

例えば、自分がしている仕事内容とクライアントが求めるスキル・内容が一致していないのであれば、そもそものコミュニケーション能力の欠如に原因があると考えられます。

もちろん、ある程度努力すれば知識不足や経験は補えますし、自信もついてくるはずなのですが、あまりに自信が持てないままでは、こうしたギャップを埋めるのは難しいでしょう。

また、このように仕事に対して「合う/合わない」の不安を抱えたままだと、クライアントにもその不安が伝染してしまいます。

いくら冷静に考えても、あまりにも成果が挙げられず自信が持てないのならば、その人にとっては社労士自体が向いていない仕事なのかもしれません。

大きな失敗はしていないものの大成はしていないケース

さて、ここまでは廃業に追い込まれてしまうケースと原因について述べてきましたが、廃業するほどではないが、成功と言えるほどでもない。

理想とは大きくかけ離れしまいながらも、何とか経営を継続している事例を見ていきましょう。

集客に迫られての値引き

開業直後から高い価格で案件を引き受けると、顧客獲得に結びつかないのではと不安になる人もいるでしょう。

ですが、そのような不安から少しでも価格を安くして喜んでもらうようにすると、仕事量は増えるかもしれませんが、労働量と価格が見合わず、仕事上のバランスが崩れてしまいます。

事務所維持のために安い料金で大量の案件をこなさなければならず、仕事に追われるだけで精一杯で、人を雇ったり、新規の顧客開拓をする時間が確保できなくなり、いつまでも事業を拡大する余裕を捻出できないという負のスパイラルに陥ってしまうかもしれません。

ある程度、最低限の受注金額の相場というものがあるでしょうから、それを大幅に下回る価格設定は考えものです。

また、先に低価格で仕事を受けた実績を作ってしまうと、事業拡大を考えた際に「あの時はもっと安くやってくれたじゃないか」と言われてしまうかもしれません。

一度価格を低く設定してしまうと、値上げを納得させるには相当の理由が必要になります。

専門家としての責任の認識の低さ

労務に関する法律のスペシャリストとして専門知識や情報があるのは、社労士であるための最低条件です。

その上で、そのような知識や情報を、相手の要望に対して上手に活用して報酬をいただくことによって、社労士としての仕事が成立するのです。

相手が求めているのは「専門家としてどうやって自分のために知識・経験を活用してくれるか」であり、それに応えられないのであれば、仕事や相手に対して無責任です。

ただの知識・経験の披露にとどまるのであれば、社労士の自己満足に過ぎません。

行政協力ばかり受けてしまう

行政協力とは、社会保険労務士会からの依頼を受けて、例えば、役所などの行政機関や商工会議所主催の「○○相談会」などに専門家として派遣されることを指します。

他には社労士試験の試験監督や、年金事務所の相談員として派遣されることもあるようですが、これらの仕事に対しても、依頼側から報酬が支払われています。

開業したてで収入が不安な新人社労士には、実務経験や知識を積んだり人脈のネットワークを構築するきっかけになったりと、報酬以外のメリットもあります。

ただし、実務経験がないと参加できる仕事が限られたり、参加する際にも、社労士会会費への会費を滞納していないなどの制限が設けられています。

この社労士会費ですが、東京都の場合であれば年会費96,000と決して安くはなく、本業である事務所経営である程度収入がないと、結構きつい金額かもしれません。

また、行政協力の業務の中には、一日拘束される仕事も多く、あまり引き受けすぎると本業である事務所経営に支障が出る可能性があります。

「何のために行政協力をしているのか」を意識し、目的がぶれないようにしたいものです。

開業の失敗を招かないための注意点

開業を後悔しないためには、できる限り失敗を少なくしたいものです。

そのために気をつける注意点はどのようなものがあるでしょうか。

成功へのモチベーションの保ち方

  • 「できるやり方」について考える

失敗についての原因追求と分析は、同じミスをしないためにはもちろん大切です。

ですが、それにこだわってばかりでは前に進むことはできません。

どのようにすれば、相手の要望に応えられるのか考えて実行し、顧客獲得に結びつけていく。

応えられなかったなら、別の方法を提案して次の成果につなげる。

「どうしたらできるか」を繰り返し考え、実行するという一連の流れを持続していくのが、成功に結びつく自営業の在り方なのです。

  • 型にはまらない

世間には様々な成功パターンを宣伝する人がいて、そういった話を聞くとそのやり方で試したくなりがちです。

ですが、それを踏襲しているうちは他の社労士との差別化は図れません。

参考にした事例に加えて、今まで自分が経験したことを活かせるようにすることで、自分の強みとしていくことができるのです。

  • 宣伝に苦手意識を持たない

まずは社労士としての自分の存在を知ってもらうことから、顧客獲得への道のりが始まります。

名刺の配布、DMの送付、異業種交流会など従来からの方法に加えて、近年ではSNSの活用などIT社会ならではの宣伝も見かけるようになりました。

地域の社会活動への参加なども、地域に根ざした営業活動を行うにはいいきっかけになるでしょう。

顔と名前を覚えてもらうのが第一の目的ですから、あまり気負わず、実際に行動に移してみるのが肝要です。

  • 収入の安定化にこだわらない

企業勤務とは異なり、安定した形での収入を維持していくには行政協力をするのも一つの手です。

ですが、そればかりしているのでは、収入を増やすには自ずと限界があります。

社労士としての成功の形がどのようなものなのか、それをしっかりイメージできないのでは、収入の安定性という呪縛からは逃れられません。

目先の収入の安定に満足しているようでは、事業所の成功・拡大は難しいでしょう。

収入が不安定ということに恐怖を覚えるかもしれませんが、裏返せば、やり方次第ではいくらでも事業を拡大できるということです。

仕事への姿勢

  • クライアントについて考える

社労士事務所の顧客として考えたいのは、企業です。

企業はそこで労働に従事する従業員で成り立っていますから、従業員について考えるのは当然ですが、様々なタイプ・考えの人間が集っているのが企業というものです。

中には、変化を嫌ったり、社労士という外部のよそ者に対して反感を感じる人もいるでしょう。

社労士が企業の中で関わる事案として、構造改変や就業規則の変更など、従業員の身分や諸権利に関わる大きな変更があるときには丁寧・明朗な説明が求められ、怠ってはいけないポイントです。

そこで従業員に対して誠実に向き合うことで、企業・従業員双方が同じ方向を目指せるようになり、組織の発展につながります。

  • 双方の視点を持つ

企業には、経営者側と従業員側の立場があります。双方の悩みが真っ向から対立するものもあるかもしれませんが、どちらの視点も合わせ持ち、各々の考えを理解して問題解消につながる解決策を提案できる社労士であれば、企業にとって安心・信頼できるパートナーとなるでしょう。

物事を捉えるときには複数の視点で捉えることで、物事を正確に判断しやすくなります。

企業としても、基本的には経営者側と従業員側の対立は望ましくはありませんから、一方的にどちらかの味方になるような社労士より客観的に判断できる社労士のほうが満足できると言えます。

開業失敗後の転職

あまり想像したくないかもしれませんが、できる限りの努力を重ねたにもかかわらず廃業することもあるかもしれません。

その場合は、やむを得ず再就職への舵を切ることになるでしょう。

今度は、転職の際のポイントについてご紹介します。

開業失敗を原因とする廃業後の再就職先

再就職先としては、やはり社労士として仕事をしたいのか、それともそれ以外の仕事もしたいのかで、選択肢は異なってきます。

前者であるならば「社労士事務所」への就職、後者であれば「その他一般企業」への就職を目指す形となるでしょう。

社労士事務所への就職

社労士事務所への就職を考えるのであれば、顧客に「ブラック企業を抱え、その恩恵を受けている」事務所が望ましいと言えます。

ブラック企業と聞くと、あまりいい気はしないかもしれませんが、顧客として見た場合、そのような企業では労務問題を抱えている可能性がかなり高く、社労士の需要度は大いにあるはずです。

一般的には、ブラック企業とまで言われるほどではないにしても、労務に何の問題もない企業はごく一部であり、何らかの労務問題を抱えている企業がほとんどです。

特に近年は、コンプライアンスの不備については世間の目も厳しくなっていますから、企業も法的な規制・ペナルティについて敏感になってきており、社労士の需要自体は増加傾向にあります。

そうした状況を把握し、積極的に企業に対して就業規則の整備をしている事務所は、しばらく安定して仕事を受けるでしょう。

一般企業への就職

社労士としての経験を活かしつつ、他の業務も学びたいのであれば、中小企業やベンチャー企業の人事部門で評価されやすいでしょう。

大企業では人事・労務部門が細分化されている事が多いので、既存の社員の中で既に労務問題への対応可能であったりしますが、企業規模が小さいと一人に任される業務の範囲が広く、種類も様々なケースが多いです。

転職時の注意点

前の仕事との関わりを避ける

一般的には、個人事務所を畳んだというのはやはりマイナスのイメージが付きまといます。

同僚に知られた場合には、根拠のない噂や悪意のある評判を広める人もいるかも知れません。

再スタートを切るならば、一切をリセットして新しい気分で始められる環境を選ぶほうが、前職に関する煩わしさを避けやすいでしょう。

職歴の空白期間を作らない

職務経歴に空白期間があると、転職は難しいと言われます。

ヘッドハンティングなどの特殊な場合を除いては、正社員を目指した35歳を過ぎてからの転職はかなりの困難を伴います。それに加えて独立開業・廃業を経ての転職は、先に述べたようなバイアスもかかりますし、年齢的にもかなりのハンディを負う覚悟が必要です。

廃業整理と転職活動を同時に行うのは、諸事に追われて大変かもしれませんが、経歴にブランク期間を作らないよう計画的な活動をしていきたいものです。

廃業後の再就職先を探すには

年齢を重ねた専門家の再就職を探すのは、かなり難しい作業になります。

ただし、「士業の転職」に特化したエージェントを利用した場合は、専門性への理解度が高いので、前職のキャリアも有利に活かせる可能性があるでしょう。

まとめ

社労士の開業は、たしかにリスクもありますが、一般企業のサラリーマンでは味わえなかった喜びや楽しみをもたらしてくれることでしょう。

開業を志す方々の中には、社労士資格を取るまでも大変な努力を重ねてきた人も多いことと思われます。

せっかく今まで重ねてきた努力を活かすためにも、自分にとって、最高・最適な理想の社労士の在り方を追い求めてはいかがでしょうか。

監修 片野 則之

関東学院大学卒。社会保険労務士事務所NKサポート代表。開業社会保険労務士として、中小企業を中心とした人事・労務コンサルティングを行う。

HP:https://www.e-606.net/