なぜ人気?宅建取得のメリット・役立つ業界とは

仕事をする人に人気のある資格はいくつかありますが、安定した人気を誇っている資格の一つに、宅建があります。

宅建と聞くと不動産業界に関わる人が取得するものと思われがちですが、他の業界においても、取得を目指す人は数多くいます。

今回は、そんな宅建のメリットについて考えてみます。

「キャリアプランニングについて真剣に考えている」「何か有力な武器を手にしたい」と考えている方は、是非参考にしてください。

宅建の概要

毎年20万人以上の人が受験する宅建ですが、人気のある理由、どのような業界で重宝される資格なのか、という点を十分に理解してから取得を目指すことが大切です。
そもそもどういう資格なのか全体像を把握することから始めましょう。

「宅地建物取引士」というのが、宅建の正式名称です。
「一般社団法人不動産適正取引推進機構」が主催の国家試験で、 原則として、年1回のみの試験となっています。試験日は、例年ですと10月の第3日曜日に試験が行われます。

「宅建士」とは、宅地建物取引業者が消費者と契約を結ぶ際に、重要事項説明書を交付する役割を担います。 重要事項説明書の交付は宅建の有資格者のみに認められていて、宅建士の独占業務のひとつです。

不動産売買や賃貸においては、契約締結の相手方に対して、必ず宅建士の有資格者が 証票を提示して、重要事項説明書を交付することになっていますから、宅建の有資格者が最低一人でもいないと業務が成り立ちません。

つまり、不動産業界において宅建士なくして業務を行うことはできず、弁護士や司法書士などと同じように独占業務を行う重要な資格なのです。

長年の人気資格である秘密

宅建が長期にわたり人気が衰えない理由は、三つ考えられます。

人気の秘密
  • 需要が途切れることがない
  • 資格を取得すれば、原則として失効することがない
  • 受験資格に条件が課されていない

それぞれの理由について、具体的に見ていきましょう。

需要が途切れることがない

先に述べたように、不動産取引は宅建士がいることを前提に成り立っています。
したがって、需要が切れる心配はまずありません。「せっかく仕事で活かそうと思ったのに、資格を取らなくても良い仕事だった」という無駄骨を折る心配がありません。

資格を取得すれば、原則として失効することがない

宅建試験に合格し登録すると、登録抹消処分にならない限りは、その資格は一生有効です。
資格の種類によっては数年ごとに更新試験があるものもありますが、 宅建の場合は5年ごとに法定講習を受講すれば一生有効です。

法定講習の費用も16,500円程度とそれほど高額ではないので、資格の価値を考えれば更新の価値があると言えます。
<参考>公益社団法人全日本不動産協会 埼玉県本部

受験資格に条件が課されていない

宅建の受験条件として、「高卒以上または不動産業界で2年以上の実務経験を持つ者」に限定されていた時代もありましたが、現在では受験資格が撤廃されています。
年齢や学歴、国籍などの条件がありませんから未成年でも受験が可能です。

宅建取得のメリット

不動産業で役立つ

不動産業で資格を活かせるのは言うまでもありません。 もっとも、ただ不動産会社で働くだけであれば、特に資格はなくても就職できます。

しかし物件の契約締結時には、必ず宅建の資格を持つ人間が担当しなければなりません。

宅建の独占業務には、次の三つが挙げられます。

宅建の独占業務
  • 重要事項の説明
  • 重要事項説明書への記名押印
  • 契約内容書面への記名押印

どれも契約締結時には重要な業務ですが、これを行うことができるのは宅建士だけですので、どの不動産会社でも、無資格者よりも有資格者が就職には有利になります。

また、会社によっては昇進・昇給の条件に「有資格者であること」を求める場合もあります。

入社後も、有資格者と無資格者では待遇に差が出る場合があるので、転職などを見据えているのならば、是非宅建試験に合格しておきたいものです。

金融業で知識を駆使する

銀行やノンバンクなどで、預貯金業務と並んで大きな利益を上げるのが、ローン・融資などの貸出業務です。

「融資」と聞くと、一般企業への融資を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、個人単位で考えるなら、「住宅ローン」「不動産ローン」などは身近なものでしょう。

また、不動産物件を対象としたローンだけではなく、他の融資を受ける際にも不動産を担保として設定する例が多く見られます。

この時に、担保の対象物件が居住専用地域にあるのか商業地域にあるのか、また市街化調整区域などの制限事項が課されていないかなどで、査定額は大きく変わってきます。

金融機関がこのような査定を行うときは正確な査定額でなくては困りますから、宅建資格を得るときに学んだ知識がそのまま活かせるケースが多いのです。

宅建試験の受験科目の中には不動産登記法などの法律もあり、実務上もそうした知識を求められますから、査定などを行う金融業界では、有資格者は非常に重宝されています。

独立開業で役立てる

何らかの事情で独立・起業する場合の新たな物件探しの場面でも、宅建の知識は役立ちます。

その際には、自分が独立起業を考えている業種に対して、次のようなことを考慮しなければならないでしょう。

  • どのようなエリアや物件が適しているのか
  • 不動産を持っていた場合、担保としてどれほどの価値があるのか
  • 法令上の制限に引っかかってはいないか

これらのことを考慮して、金融機関から融資を引き出すことになりますから、宅建の知識があれば有利に事を運びやすいと言えます。

中でも、不動産業者として独立する場合には特にメリットが大きいでしょう。

なぜならば、「一つの事業所につき5人に1人は正社員の宅建資格取得者を置かなければいけない」という制限があるからです。

開業者自身が有資格者であれば、必要最小限の人員で開業・営業することが可能になりますから、新たに有資格者の正社員を雇わずに済み、コストダウンにもつながります。

開業当初に多くの運営・運転資金がかかる場面において、この種のコストダウンができるというのは大きなメリットでしょう。

不動産物件の購入・賃貸で上手に宅建の知識を使う

一戸建てやマンションの購入となると、一括で購入する人は稀でしょう。

住宅ローンなどで少しずつ返済しながら購入するのが一般的ですから、そのためには入念な資金計画が必要です。

住宅ローンなどを組んだ場合は、長期間にわたる返済になりますから、次のような点を考慮して借りなければなりません。

  • ローン融資額とその金利
  • 頭金と月々の返済額
  • 返済方法
  • 固定資産税

これらの知識については宅建資格の受験勉強の時に学習する内容ですから、それらの知識を持っていると、ローンを組もうとしている金融機関に対して、有利な交渉を進めやすくなります。

また購入の場面だけに限らず、賃貸においても、敷金礼金についての知識があれば、退去する時の敷金返還の交渉、物件と家賃が見合っているかどうかの判断がつくなどのメリットがあります。

広範囲の場面で知識の応用が効く

宅建は不動産関連の資格として認知されていますが、実際に勉強するのは不動産の知識だけに止まりません。税務関連をはじめとして、民法商法などの一般法の勉強もしますから、幅広い分野にわたる知識が構築できます。

したがって、結果的に転職などで不動産と直接関わりのない分野でも知識の応用が利きやすいので、つぶしがきく資格と言えるのではないでしょうか。

さらに国家資格ですから、行った先での登録さえ忘れなければ全国どこでも活躍ができます。

専門資格ではありますが、 裾野が広い知識を身につけることができる宅建は、どのような場面でも使い勝手の良い資格の一つに違いありません。

試験内容

試験合格に向けて勉強するには、試験内容や出題の傾向難易度などを確認しておかなければなりません。
出題される問題の科目数はおおよそ一定で、出題数が多い科目を重点的に勉強した方が得点UPにつながりやすくなります。
先に述べたように、宅建試験では法令に関する知識が中心に出題されます。どの法令について問われているのかをしっかり確認し、勉強時間の配分を考えましょう。

試験の出題範囲と内容

宅建の試験で問われる問題の科目数と出題数は、次の表がおよその目安です。

科目

内容

出題数

権利関係 民法、不動産登記法、建物区分所有法、借地借家法 14
法令上の制限 都市計画法、建築基準法、国土利用計画法、農地法、

土地区画整理法、宅地造成等規制法等

8
不動産取得税、固定資産税、所得税、

印紙税、登録免許税、贈与税

3
地価公示.鑑定評価 地価公示法、不動産鑑定評価基準
宅建業法 宅建業法・住宅瑕疵担保履行法 20
その他(5問免除) 住宅金融支援機構法、不動産の需給・統計、

不当景品類及び不当表示防止法、土地、建物

5

この表を見ると、「宅建業法」が全体の4割近くを占めており、重点的に学習する必要があるというのが分かります。

一方で「権利関係」と「法令上の制限」に関する問題を合わせると、 こちらも全体の4割を超えますので、「宅建業法」と「権利関係」及び「法令上の制限」どれかに偏る勉強ではなく、これら3科目については万遍なく学習する必要があるでしょう。

「その他」に関しては問題数の割合としては高くはありませんが、一問が合否を左右することもありますので、無視していいものではありません。
宅建試験においては法令に関する幅広い知識が問われるので、「 広く浅く」勉強する事が、合格へのコツになります。

宅建の出題方式と特有の制度について

宅建試験の特徴
  • 全問マークシート式の試験である
  • 免除科目制度がある

宅建の出題形式は、全問4択のマークシート式です。
かつては行政書士でも全問マーク式の時代もありましたが、現在法律系の国家資格の中で、全問マーク式の資格試験は、宅建くらいです。
試験時間は2時間で、問題数が50問、合格ラインは7割程度が目安となっています。

また、宅建試験特有の制度として、「免除制度」があります。
これは既に宅建業務に従事している従業員、つまり実務経験者を対象にしたもので、所定の講習を受けると、免除科目5問が正解とみなされるというものです。

試験時間は10分短縮されますが、その科目の勉強にかける労力を考慮すると、他の受験者と比べて合格に有利になる制度といえます。事実、この講習を受けた受験生は一般受験生と比べて合格率が高い傾向にあります。
この講習を受けられる対象者は、次の要件を満たしていなければなりません。

免除対象の条件
  • 宅地建物取引業に従事していること
  • 「従業者証明書」を提示できること
  • 所定の登録講習を修了していること

講習は国土交通省が指定した教育機関で受講することができ、受講期間はおよそ2ヶ月程度のところが多いようです。

受験を考えていて、既に業務に従事している方は問い合わせてみると良いでしょう。

これらの特徴が、他の法律系資格と比較した場合に「合格率が高い」こと、「人気がある」ことの要因になっていると思われます。

宅建の難易度と独学の可能性

宅建の合格率は15%〜17%程度と言われています。

士業

受験者数

合格者数

合格率

宅建

213,993

33,360

15.6%
税理士

36,701

4,716

12.8%
行政書士

52,386

4,968

9.5%
社労士

49,570

2,525

5.1%

(2019年度の場合)

試験の難易度や合格率から考えると、他の法律系資格に比べて、宅建士は比較的合格率が高いといえます。
ただし、合格率が15%から17%というのは、法律の勉強をするのが初めてという人がほとんど勉強しないで合格できるようなものではありません。
逆の視点から見れば、8割以上の人が不合格になるわけですから、入念な準備と計画的な学習が欠かせません。

問題の配点は、一問1点で計算され合格基準の目安は36点から37点くらいとされています。7割強の正解率が求められますから、決して低い正答率ではありません。
曖昧な知識では正解できないような出題内容になっていますから、きちんと理解して正解に結びつけられるようにしなくてはなりません。

法律系の資格の中には司法試験のように完全な独学での合格は難しい試験もありますが、宅建は比較的独学でも合格しやすい資格です。
仕事と両立させながら、参考書や問題集を使って学習するスタイルでも、合格を目指すことは可能です。

合格に必要とされる勉強時間と勉強方法

宅建は他の法律系資格と比べると比較的易しめで、独学での合格も可能です。
そこで気になるのは、合格に必要な勉強時間や進め方ではないでしょうか。
次に、宅建合格に向けて勉強する場合に確保しておきたい勉強時間の目安や、具体的な勉強の進め方や手順について解説していきます。

合格に要する勉強時間

これまで法律の勉強したことがあるかどうかによって、宅建合格に必要な勉強時間は大きく異なります。全くの初学者である場合、まず法律用語に慣れるまで時間がかかりますから、勉強時間は長くなりがちです。
中には100時間程度で合格してしまう強者もいますが、一般的には200時間から300時間を確保したいと考えて良いでしょう。

働きながら合格を目指す場合のプランとして下記の例を参考にしてみてください。

【学習プランニング例】
・平日:帰宅後3時間×5日=15時間
・土日:5時間×2日=10時間
・1ヵ月で約90〜100時間
合格まで300時間の場合、3~4ヵ月必要

もちろん勉強する環境や仕事との兼ね合いによって必要な時間などは異なりますが、上の例は、比較的実現可能なプランではないでしょうか。

具体的な勉強方法とは

まずは過去問を解く

宅建合格を目指す場合、まずは「過去問」を見て傾向を把握し、2年分の過去問を解いておくのがおすすめです。
インターネット上には過去10年分の過去問をまとめたサイトなどもありますのでまずは3~4年前の試験を実際に解いてみましょう。
直近の問題を残すのは、試験直前に実力の確認も兼ねて、近年の傾向を把握するためです。

おそらく、最初のうちは過去問を見ても「何が何だか分からない」という状態でしょう。
基礎知識がないままに勉強を始めた状態では当然ですので、気にしなくても大丈夫です。

次に参考書を見る

試験の形式やどのような問題が出題されるのかを大まかに掴んだら、書店などで宅建の参考書を購入しましょう。
人気の資格なだけあって、宅建の参考書や問題集は種類も豊富です。できるだけ自分にとって見やすく理解しやすそうなものを選びましょう。
勉強進めていくうちに、2冊以上必要になることもありますから、張り切りすぎて最初から分厚いものや文字数が多いものを選ぶのではなく、取り組みやすそうなものを選ぶのがコツです。

注意したいのは、「参考書を完璧に理解してから問題を解く」という考え方です。
完璧を求めていては非常に効率が悪いですから、大方のことが理解できたら問題を解いてわからなかったところや間違えたところを重点的に見直し練習を積んだ方が効率的です。

「参考書→問題集→参考書」と繰り返すことで、着実に知識が定着していきます。

まとめ

では最後に、宅建のメリットについてまとめておきましょう。

宅建のメリットまとめ
  • 不動産業で役立つ
  • 金融業で役立つ
  • 不動産物件の購入・賃貸で役立つ
  • 広範囲の場面で法律知識の応用が効く

宅建を取得することで不動産の専門知識が身に付くだけでなく、お金の流れや税関係など仕事でも役立つ知識が身につくことがおわかりいただけたのではないでしょうか。

不動産業に関わっている人はもちろん、他の業界で活躍している人でも、宅建は法律への理解を深めるために有効といえます。

宅建を取得することにより、管理職として見識を広げ、 幅広い視野を持つことはキャリアプランにおいても確実にプラス効果をもたらすでしょう。

管理職としてキャリアを磨くために資格の取得を検討している人は、是非宅建士の取得も検討してみてはいかがでしょうか。

■監修者より一言

宅建士は不動産業界のみならず、金融業界、コンサルティング業界、不動産ファンド業界、そして一般企業の店舗開発部門や用地仕入部門など多彩な活躍の場が用意されています。実際就職、転職の際には、有資格者が優遇されている面が少なくありません。
試験は簡単ではありませんが、十分な準備をすれば必ず合格できる試験です。文中の3か月合格プランはかなりハードで学生向けですが、短期間で合格するためには、集中的に学習することが必要になってくるでしょう。

宅建士監修 徳田倫朗(トクタ ミチロウ)

株式会社イーアライアンス代表取締役。宅地建物取引士。不動産・再生可能エネルギー投資ファンドの組成・販売、投資用商業不動産の売買・仲介、海外不動産投資など、不動産に関する20年以上の実績と経験を有する。近年では「新しいコトに新しい資本の流れを」をコンセプトに、イノベーティブなビジネスモデルと市場に散在する遊休資本をつなぐための新しいファイナンスモデルを開発・提供している。優れた技術革新や新サービスを事業として洗練させるとともに、それらに対する新たな資本の流れを創造する。