税理士に将来性はある?現状からAI時代の需要まで解説

「税理士」は誰もが知る有名な職業です。しかし、最近、よく言われることがあります。
それは、「AIの進化で、税理士の仕事もなくってしまうのでは?」ということです。

確かにAIの進化は著しく、書類作成などの作業はAIによって代替される可能性は高いでしょう。
とは言うものの、税理士の仕事のすべてがAIで代替可能なのでしょうか?

そこでこの記事では、税理士の現状から将来性まで、AIの進化による影響を踏まえて解説していきます。

税理士の現状

受験者は減り、登録者は増えている

税理士は、ここ20年間で減少することなく増え続けています。毎年700人前後で登録者が増加しており、およそ77,000人になっています。

しかし、受験者数は減少傾向にあります。それは一体どういうことなのでしょうか。

それには、特定年数以上の国税従事者は試験科目の免除という優遇措置があることが関係しています。つまり、国税を定年退職した人が、試験を受けることなく税理士になれるということです。これにより、受験者数が減っても登録者数は増えるという現象が起きているのです。

また、税理士には「定年退職」がありません。つまり、本人しだいでいつまでも働くことができるということです。したがって、現状は60歳以上の年齢層が半数以上を占めています。

税理士の高齢化

上にも述べたように、いま税理士の高齢化が非常に進んでいます。平均年齢が約60歳2人に1人が60歳以上というのが現実なのです。

それには上記のような定年退職がないことと、国税従事者の試験科目の免除があることが大きく関係しています。
さらには、税理士試験は難関で、合格に必要な5科目に合格するのに何年もかかる人が多いということも考えられます。つまり、若者が合格することが極めて難しいのです。

このように、高齢化が進むことで後継者不足による事務所の事業承継問題が深刻になっており、若手税理士が求められています。

一般的には、30代では転職が難しいと言われますが、税理士業界では十分に可能です。会計事務所や税理士法人における積極採用も十分に考えられます。

受験者減による売り手市場化

高齢化とともに、税理士試験の受験者減少も問題です。最近5年で1万人も受検者が減少しています。特に深刻なのは、20代・30代が減少していることです。

リーマンショックによる不況で、「税理士業界は厳しくなる」「AIに仕事を奪われる」といった風評の影響もあるでしょう。

当然ながら、税理士の就職・転職市場は売り手市場になっています。特に地方都市中小の税理士法人・会計事務所における採用は拡大傾向が続くでしょう。

また、大手企業では税務業務を社内で行うために、税理士を採用する動きが拡大しています。
このように、税理士が活躍できる場は、確実に広がっています。税理士資格を保有していれば、転職には極めて有利であることは間違いありません。

税理士の需要

需要は減少傾向

税理士の主たる顧客は中小企業です。しかし2000年代以降、中小企業数は減少し続けており、毎年数万の企業が倒産、廃業に追い込まれています。

その傾向は特に地方都市において顕著です。中小企業や個人経営の店舗などが倒産、廃業してシャッター通りになっている商店街が増えています。

当然、税理士の需要も減少し、顧問契約の獲得競争はより厳しくなっています。

税理士には「独占業務」があります。税理士にしかできない業務があるため、法的にはある程度の需要は保証されているはずです。しかし、競争によって顧問報酬は下落しています。

では、安定して仕事を確保するためにはどうすればいいのでしょうか。
それは、「専門性を高める」ことです。いかに他の税理士と差別化できるかが重要なのです。

「資格を取れば安泰」というような時代ではありません。取得後も勉強し、専門性を高め、実績を積むことが必要であることを肝に銘じておきましょう。

経営者に最も頼られる存在

需要は減っているとお伝えしましたが、やはり経営者が相談する相手として、特に求められているのが税理士や公認会計士なのです。
実際、経営者や自営業者の大半が、外部に相談できる存在が欲しいと答えているというデータもあります。

税理士は税を専門に扱う士業です。認知度は極めて高く、信頼される存在です。
これまで、書類作成、税務代行、税務相談などを中心でしたが、今後は経営を支えるための財務分析やコンサルティングまで行うことが求められるでしょう。

競争が激しい現状では、従来のような税理士としての専門知識だけでなく、顧客との信頼関係を築き、外部のパートナーとして経営をサポートする姿勢が必要となるでしょう。

税理士の将来性

AI技術の進化で、多くの職業で人が排除されるのではないか?
こうした疑問や不安をよく耳にします。
では、税理士の将来はどうでしょうか。

AIの進化で税理士は不要になる?

税理士は士業であり、かつては「税理士は安泰」と言われていました。
しかし、現在は税理士だからといって収入が高く、安定しているわけではありません。

会計処理や記帳作業、税金の計算などの定型的な業務については近い将来、AIに代替される可能性が高いでしょう。すでに一部の大手税理士法人では「RPA(ロボットプロセスオートメーション)」というソフトを導入し、全く人手不要なシステムの運用が試されています。

ただ、それは税理士業務の一部に過ぎません。さらに代替できるのは事務処理などの単純作業であり、専門知識に基づいた相談対応は税理士自身でなければできません
企業の決算内容や財務事情、経営者の方針を勘案して企業収益に貢献するためのアドバイスを行うといった、コンサルティング業務は「人」でなければできないのです。

以上のように、AIの進化は加速度的に進むでしょうが、AIによって税理士の仕事が失われることはまずないと言って差し支えないでしょう。

中小企業経営者の右腕となり、経営上のコンサルティングで貢献する税理士は、今後も必要不可欠な存在であり続けると言えます。

IT化で広がる可能性

AI技術やIT化は、むしろ「活用」するべきなのです。
税理士は仕事を効率化し、時間をより有効に使うことができるでしょう。

「税の専門家」として行う相談やアドバイスにより多くの時間を割き、コンサルティング業務に重点をおくことができるようになります。

今後は、税理士としての専門知識だけでなく、AIやITに関する知識が必要になりますし、コンサルティング技術も問われることになります。常に最新情報を収集し、より付加価値の高いサービスを提供できれば、他の税理士との差別化を図ることができます。

新技術や時代の変化は、受け入れて活用することが大切だと言えます。

税理士の今後の活躍の場

さて、ここまでの解説で、AIやIT技術の進化によって税理士の仕事がなくなることはないとお分かりいただけたと思います。
では、税理士は今後どうすれば活躍できるのでしょうか。

独立開業する

税理士は、会計事務所、税理士法人、企業内税理士など、安定した地位と収入を得て働くだけでなく、独立開業するという選択肢もあります。実際、税理士登録者の内、8割が独立開業者です。

税理士には独占業務があり、需要も多い仕事です。顧問契約が結びやすく、安定した収入も確保しやすいため、独立開業に適した仕事だと言えるでしょう。

また、独立した場合には定年がなく、自分のがんばりがそのまま報酬に結びつくため、大幅な収入増も可能です。数千万円という収入を実現している方もいます。

営業から経営に関わるすべての仕事をしなければなりませんが、自分のペースで、自分で決断して動くことができます。大変ではありますが、やりがいも大きいでしょう。

専門分野に特化する

IT技術の進化により、会計処理や税務申告などの定型業務だけを行う税理士は、徐々に淘汰されていくでしょう。
これからの税理士は、ITをうまく活用し、より専門的な分野に活躍する場を広げることが求められます。

実際、グローバル化が進む今日、海外に事業を展開する日本企業、逆に日本に進出する外国企業が増えています。国内外の税制に精通した税理士であれば、そうした企業の事業戦略に貢献できるでしょう。

また、今後より進む少子高齢化により、事業承継や相続問題などが仕事として増えるでしょう。このような業務に特化することも戦略と言えるでしょう。

他にも、企業の株式公開M&Aなど、税理士が必要とされる場面は数多くあります。
それぞれの事案について、専門性を高めて実績を作れるかが重要になるでしょう。

最近は、多様化する事案、要望に応えるために、異なった専門性を持つ税理士が合同で税理士法人を立ち上げるケースも増えています。

今後も税理士間の競争は激化すると予想されます。しかし、自分の得意分野を確立することで活躍するフィールドを拡大することは可能なのです。

まとめ

最後に、税理士の現状や将来性についてまとめておきましょう。

税理士の現状・将来性
  • 税理士は高齢化しており、若手が求められている
  • 中小企業の減少により需要は減少傾向にある
  • AIに全てを代替される可能性は極めて低い
  • ITをうまく活用し、コンサルティングなどに力を入れることが必要
  • 独立するか専門分野に特化することで活躍の場が広がる

税理士は受験者数や需要の減少は見られますが、専門性を磨いて差別化を図れば十分に活躍できる職業です。特に高齢化が進んでいるため、若くてITに強い人材が求められています。

キャリアアップを目指す方はぜひ、取得を検討することをおすすめします。

■監修者より一言

本文のとおり、ITやAIの技術が進歩するにしたがって、定型的な記帳代行などを中心とする事務所は自然淘汰されていくでしょう。生き残りの道は、コンサルティング能力を高め、何かしらの専門分野を持つことです。
伸びている税理士は、税務訴訟において弁護士の補佐人として法廷で弁論をしたり、国際税務や生前の相続対策に力を入れています。社会的な話題に目を光らせ、ほかの税理士よりも強みを持つことが必要になります。
また他の資格者や無資格の人であっても、優秀な補助者として雇うことが重要です。例えばメーカーで原価計算などを経験してきた人などは、資格がなくても管理会計に精通していることが多く経営者へのアドバイスについて税理士の右腕となってくれるでしょう。
税理士の仕事は外向きだけではありません。伸びる税理士は内部的に補助者の教育に力を入れることで、税理士本職の仕事に専念できるようにしています。

監修 資格LIVE編集部
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